すする「日常の味」  暴動現場のワヒッドハシム通り ジュースとバクミーで

 5月に総選挙委員会(KPU)が発表した大統領選の選挙結果をめぐる暴動で、デモ隊と治安部隊の衝突の場となった中央ジャカルタのワヒッドハシム通り。「暴徒」によって焼かれた警察官詰め所の隣にあるフルーツジュース店とバクミー店は日常を取り戻し、昼時には多くの客でにぎわっていた。

 焼かれた警察官詰め所はサリナデパートのすぐ東にあり、詰め所の隣には、フルーツジュース店「アネカジュース」とバクミー店「バクミー・アヤム・スマラン」がスペースを共有して営業している。8人ほどで囲えるテーブルが二つ置かれた、庶民的な「食堂」の雰囲気だ。
 席に着き、何を注文しようか考えていると、突然バクミー・アヤム(2万ルピア)を出された。調理場をみると、この料理が大量に作られているのが見える。「昼は忙しいから、注文がすぐ来なければこれを出すんだ」と調理していたタリムさんは笑う。
 早速ワンタンスープを麺にかけ、バクミーをすする。味は普通だ。特別においしい、とまではいかないが、まずいというわけでもない。だが、おなかにはたまる。店名にスマランと入っているが、タリムさんは西ジャワ州ボゴール市出身。オーナーが中部ジャワ州スマランの出身らしい。
 デザートをかねてマンゴージュース(1万2千ルピア)を注文。こちらも普通なおいしさ。値段を考えれば十分満足できる一品だ。ジュースを作ってくれたデニーさんは「火事で屋根はちょっと焼けたけど、大きな被害はなかったよ」と明るく話す。席からは屋根として使われているシートの一部が焼け、木の板で補強されているのが見えた。
 特段おいしいわけでも、店内の雰囲気がいいわけでもないのに、食後は充実感があった。詰め所が焼かれた5月22日の夜は異様な風景の前に気分が張りつめていた。店は2、3日後には再開したという。今、眼前のワヒッドハシム通りを眺めると、乗用車やオートバイがひっきりなしに行き来し、日常が戻ってきたのだと感じられる。
 店には会社員や公務員とみられる人々が次々と入り、バクミーやジュースを平らげて仕事に戻っていく。特に味わう様子は見られないが、活気があり、皆楽しそうだ。(大野航太郎、写真も)

◇アネカジュース、バクミー・アヤム
住所 Jl. KH. Wahid Hasyim, Kec. Menteng, Kota Jakarta Pusat
営業 午前10時~午後8時

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