真実とイカサマの選挙政治

 今月22日に大統領選挙の公式結果が発表される。先月の投票日から約1カ月。この間プラボウォ陣営は「メディアの報道や世論調査機関の開票速報はインチキだ」「組織的で体系的で大規模なイカサマが横行してる」と主張し、陣営の集計では得票率60%で勝利だと訴えてきた。この先どうなるのか。
 プラボウォ陣営にとって、永遠に勝利を訴え続け、仮に総選挙委員会(KPU)が現職の再選という結果を出したとしても、「イカサマの結果だ」と言い張ることが政治的に意味を持つ。「イカサマ政府」を正すために、プラボウォは今後もイスラム保守勢力と団結して戦うぞという士気高揚につながるからだ。この団結は、彼の政治生命の持続にとって不可欠である。
 同時に、彼を擁立するイスラム擁護戦線(FPI)などの政治団体にとっても戦略的な意味を持つ。彼らは今回の選挙で初めて国政に影響を与えるまで登り詰めた。この一歩は大きい。これからが第2ステージだ。5年後の大統領選挙で、再度イスラム保守勢力結集の音頭を取って、誰かを担いで政権の中核に食い込んでいく。これが中期的な目標だ。それに向けた士気高揚と組織拡大には、「イカサマ政府との戦い」が絶好のスローガンとなる。
 そう考えると、KPUがどんな最終結果を出そうと彼らにはあまり関係ない。大事なのは、「大規模な不正」が無視され大量の票が「盗まれ」、真の勝者プラボウォは「イカサマ政府」に排除されたという「お経」である。このお経をメガホンでがなり続けていくことが「力の誇示」であり勢力維持の源となる。そのため、事実を客観的に説明して他者を説得するという行為に関心を持たない。陣営の訴えが事実だと開き直る。
 こういう開き直り戦法は、いわゆる「ポスト真実の政治」の典型である。真実には価値はなく、感情や信条が世論扇動のために兵器化される政治だ。欧米の民主主義国をむしばむ病理でもある。そのインドネシア版が今見え隠れしている。
 KPUの公式結果発表を経て、プラボウォ陣営は「大規模な不正」をネタに憲法裁判所に起訴するであろう。そこで陣営が提出する「不正の証拠」を検証することになる。カギはC1フォームだ。これは各投票所で作成した末端集計結果の記録で、投票所で待機する両陣営の証人にも同じ記録が1枚づつ配布されている。これを照らし合わせれば、何が不正で何が真実なのか一目瞭然となる。
 しかし、真実に納得するという行動規範は、もはや時代遅れなのかもしれない。であるなら、和解を期待するのはナイーブすぎよう。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

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