【メラプティ】政界エリートの思惑

 いよいよ来週は投票日。世間の関心は大統領候補の選挙キャンペーンや有権者の支持動向にあろう。ただ、少し視点を変えると、違った選挙政治の側面が見えてくる。それは政界エリートの思惑という視点である。
 彼らの基本的な発想は、いかに自己の利益を最大化させるかだ。そのスタンスで選挙に臨んでいる。ここで見え隠れするのが、与野党幹部に共通する思惑である。それはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)とマアルフ・アミンのペアが勝ったほうが皆ハッピーという現実だ。
 一番露骨なのがジョコウィ陣営である。当初、ジョコウィは副大統領候補にマフッド元憲法裁判所長官を迎えようとした。それを与党連合リーダーたちは拒んだ。特にゴルカル党、民族覚醒党、開発統一党の党首たちは、野心家のマフッドが副大統領になろうものなら、5年後の次の選挙で大統領候補のフロントランナーになっている可能性が大だと読んだ。だから拒否した。逆に高齢で次の目はないマアルフを押し込んだ。そうすれば、2024年大統領選挙は皆が一斉にオープン市場でゼロからの競争になり、彼らも優位に立てる余地が出てくる。
 プラボウォとサンディアガを擁立する野党連合も同じ思惑だ。多くの野党幹部はサンディアガの台頭に警戒している。仮に当選したら24年には最有力な大統領候補。なのでキャンペーンは面従腹背で手伝わない。
 例えば福祉正義党は党内亀裂が激しいが、ヘルヤワン元西ジャワ州知事や、アニス・マッタ前党首は、各々5年後に向けた野心を隠さない。民主主義者党も同じで、ユドヨノ前大統領の息子のアグスを24年に大統領選に絡ませるシナリオで動く。こういう野党エリートにとって、サンディアガは5年後の最強ライバルになる。できるだけ彼の台頭を抑えることが、自己利益の最大化となる。
 地方リーダーも同じ思惑だ。ジャカルタ州知事のアニス、西ジャワ州知事のリドワン、中ジャワ州知事のガンジャル、西ヌサトゥンガラ州の前州知事ザイヌル・マジディなど、24年を見据えて動いている。彼らにとってもサンディアガがフロントランナーとなる状況は好ましくない。ベストなシナリオは、ジョコウィ再選による5年後のフロントランナーの不在化だ。
 ここに与野党を超えて、またジョコウィ陣営とプラボウォ陣営という対立軸を超えて、政界エリートの共通の思惑が見えてこよう。いま社会は、宗教的保守主義と価値多元主義の間で分断が深まりつつあり、選挙がそれを助長している。その裏で、政界エリートの思惑は日増しに一体化するというのは皮肉なものである。(立命館大学国際関係学部教授)

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