【メラプティ】プラボウォとモラルの選挙戦略

 前回はジョコ・ウィドド大統領陣営の選挙戦略を観察した。今回はプラボウォ陣営の選挙運動を見てみよう。その特徴が12月2日の大規模集会に表れている。
 集会は「212再結集」のスローガンの下、モナス(独立記念塔)に集まるあふれんばかりの人の渦で周辺道路を埋め尽くした。ステージに立ったプラボウォは「1千万人以上が結集してる、すばらしい」と賛美した。かなり誇張された数字だが、ジャカルタ以外にも北スマトラ州のメダンなどで同じ集会が開かれ、多くの人が集まったのは事実だ。
 212というのは12月2日を意味する記号で、2年前のその日、当時のジャカルタ特別州知事のアホックに抗議する大規模なイスラム動員が行われた。その抗議集会の後、彼は州知事選挙に負け、宗教冒とく罪で有罪となり収監された。このパワーを再度見せようというのがことしの212の狙いとなった。
 ただ、今は選挙期間中のため、大規模な選挙運動は来年3月末まで禁止されている。今やったら選挙法違反だ。そのため、212の主催者であるイスラム強硬派リーダーたちは、これは選挙運動ではなく「モラル」運動だと訴え、集会を正当化した。
 モラルとは何ぞや。彼らによると、現政権は不公正の塊で、とくに国民の大多数が信仰するイスラムに対して公正でないとのことである。例えば、解放党というイスラム団体を強制解散させたとか、イスラム擁護戦線(FPI)のリーダーであるリジック・シハブがサウジから帰国できないようにしているとか、他のイスラム指導者を犯罪者扱いしているとか、諸々の「不公正」を列挙する。それらを正すのが宗教モラルであり、そのための決起集会が212だという主張だ。
 しかし、そのモラルを盾にした運動は選挙活動と表裏一体である。そもそも212運動の主催者ユスフ・マルタックは、プラボウォ選対組織の幹部だ。地方からの集会参加者を組織的に動員したのはプラボウォ率いるグリンドラ党であり、彼と組む福祉正義党である。集会ではFPIのシハブがサウジから中継で演説し、大統領の交代や、宗教冒とく者を擁護する政党や候補者に投票するのは絶対にハラムであることを訴えた。これは選挙運動以外の何ものでもない。
 モラルの名の下で選挙キャンペーンを繰り広げ、そのメッセージを宗教に乗せて各地に広める。これがプラボウォ陣営の戦術であることがはっきりした。その効果はまだ未知数で、今後の世論調査を注視する必要があろう。
 ただ確かなのは、この選挙を通じてFPIに代表される強硬派勢力は、この国の政治の脇役から主演に登りつめようとしていることであろう。(立命館大学国際関係学部教授・本名純)

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