「日イ協力増やしたい」 企業誘致、雇用創出に注力 南スラウェシ州 ヌルディン次期知事

 6月の南スラウェシ州知事選で当選を果たした元日本留学生のヌルディン・アブドゥラ・バンタエン県知事(55)が23日、じゃかるた新聞のインタビューに応じ、日系企業の誘致や地元の雇用創出に取り組んできた経験を振り返った。州の優先課題には農漁業支援やインフラ整備を挙げ、「インドネシアと日本の協力をますます増やしたい」と流ちょうな日本語で語った。
 9月17日に州知事に就任するヌルディン氏は、九州大学の修士・博士課程で6年間林業工学を学び、日本語も堪能な知日派。州知事選では、ゴルカル党幹部や州副知事ら3人を相手に得票率43%で当選した。
 「自分の国に資源があるのに、インドネシア人が外国に出稼ぎするのは恥ずかしい」。そう思い、母国の雇用創出につなげようと、九大留学中から日本企業の誘致を働きかけてきた。福岡県の留学生団体代表を務め、投資誘致イベントを企画。通訳やガイド役を担い、母国をPRした。
 そうして結んだ日本との「縁」は帰国後に実った。日系水産会社はバリ島ブノアにマグロの下処理工場を、仏壇メーカーの丸喜(京都市)は南スラウェシ州マカッサルやバリ島に製造工場をつくるなど、複数の日本企業進出をサポート。工場の成長と共に地元住民の仕事も増えた。
 丸喜の現地法人社長などを務め、政治の経験はなかった。だが同社のマカッサル工場設立から10年が過ぎた2007年、バンタエン県出身の従業員3千人の「県知事になってほしい」という熱意に押され、出馬を決めたという。
 南スラウェシ州南部に位置する同県の面積は大阪府の約5分の1、人口は約19万人。就任当初の県の印象を「ぼろぼろ。これは困ったなと思った」と振り返る。「電気は少なく、海岸も町も汚い。洪水が毎年起きる。貧しい人が多く、男性はマレーシアやアラブ、カリマンタンへ出稼ぎに行ってしまい、町には女性が多かった」
 まず取り組んだのが洪水対策。乾期は水がなく、雨期には水があふれる。08年の洪水でおなかまで水に漬かった。土砂災害は専門だ。母校の九大とハサヌディン大の教授にも協力を依頼し、砂防ダムを造った。
 県民の74%が従事する農業の技術支援にも力を入れた。土地はあるが、種、肥料、販売先がない。政府系機関との共同研究で、トウモロコシやコメの収穫量を増やすことに成功、新たにサトイモの生産も始めた。
 「ぼろぼろだった県には今、県民が出稼ぎ先から戻り、農業をするようになった」。「小さな県が見違えた」と評価され、13年には得票率84%と圧勝で再選、2期10年を務め上げた。
 州知事就任後はまず、農業・漁業・畜産業と観光振興に取り組む考えだ。「南スラウェシは東部最大の州で、21州にコメを出荷しているが、農家はまだ貧しい」。輸出向けの水産工場や、高速道路、空港、港などのインフラ整備も進めたい。日本とマカッサルの直行便を、まずは貨物便から就航させ、ビジネスや観光促進につなげる構想も持つ。
 自身と妻が学んだ九大で、現在は長男(25)が学ぶ。今月中旬も福岡県を訪れたばかり。「日本にはビジネスで一番大事な『信用』がある」。日本との協力拡大に期待を示した。(木村綾、写真も)

86年ハサヌディン大学卒、89〜94年九州大学で修士・博士課程(林業工学)。ハサヌディン大学教授、マルキ・インターナショナル・インドネシア社長などを経て08年からバンタエン県知事。全国県知事協会事務局長。3児の父。南スラウェシ州パレパレ市出身。

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