大学内で強硬派掃討 テロ対策強化 言論弾圧再来に懸念も

 東ジャワ州スラバヤ市の教会や市警本部で5月13〜14日、子連れの家族が自爆した連続テロ事件から間もなく1カ月。宗教の多様性を認める建国5原則「パンチャシラ」の名の下、政府による過激派・強硬派摘発の手が大学内にも伸びている。イスラム国家樹立を目指す「反パンチャシラ」の動きと見なされた学生団体や教員が処分されるケースが続出。徹底したテロ対策が期待される一方、言論を弾圧したスハルト時代の再来を危ぶむ見方も出ている。

 スラバヤ市の「子連れテロ」を重く見たジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は事件後の5月22日、関係閣僚や軍・警察トップを集めたテロ対策会議を開き、幼稚園から大学までの教育機関から「テロリズムの教えを排除する」と表明した。
 今月2日にはリアウ大で爆弾を製造していた疑いで卒業生3人が逮捕される前代未聞の事件が発生。国立大学の学生組織が過激思想拡散の温床になっているとの見方が強まり、各大学ではさっそく、学生や教員への「調査」が始まった。
 7日には西ジャワ州のバンドン工科大が、学生団体「ハルモニ・アマル・ティティアン・イルム(HATI)」の活動を中止させたと発表。政府が昨年解散させたイスラム強硬派組織ヒズブット・タフリル・インドネシア(HTI)と連携していたためという。
 「反パンチャシラ」とされる教員を懲戒処分にする大学も出てきた。中部ジャワ州スマラン市のディポヌゴロ大は6日、HTIを支持していたとされる法学部の男性教授の役職を解任。ジョクジャカルタ特別州のガジャマダ大は8日、HTIを支持したなどとして、工学部の学科長と研究室長の役職を解任した。ガジャマダ大ではパンチャシラに対する考え方について2人から聞き取り調査し、懲戒処分するに至ったという。
 政府はイスラム国家樹立を目指す動きを封じ込めるため、大学に照準を合わせる方針を打ち出した。ムハンマド・ナシル研究技術・高等教育相は4日、キャンパスでの過激思想を監視する目的で「全大学で、教授と学生の携帯電話番号とソーシャルメディアアカウントを収集させる」と言及。国家テロ対策委員会(BNPT)や国家情報庁(BIN)と協力し、学生や教員のソーシャルメディアでのやり取りを調べる方針を示しており、研究者や野党などから「やりすぎだ」と異論が噴出している。
 こうした現状を、教育評論家のダルマニンチャス氏はCNNインドネシアの取材に対し、学生組織のキャンパス内での活動を禁じたスハルト体制「オルデ・バル(新秩序)」への逆行だと批判。ただ、今回のキャンパス監視の標的は過激思想で、政治活動を禁じたオルデ・バルとは異なると補足した。(木村綾)

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