【じゃらん じゃらん】魂の帰る場所 クリムトゥ山の3色湖 東ヌサトゥンガラ州フローレス島

 入り口から階段や上り道を歩き始めて約25分。その3色湖は、標高1631メートルのクリムトゥ山の山頂にぽっかり姿を現した。赤、緑、白の湖は含有成分のバランスによって、時折その色を変える。訪れた時は、黒、緑、緑。うそのような光景に言葉を失っていると、近隣の村人は、死後の魂が帰る神聖な場所だと教えてくれた。

 三つの湖からなるクリムトゥ湖で日の出を見ようと午前2時過ぎ、東ヌサトゥンガラ州シッカ県マウメレのホテルから車で出発した。曲がりくねる山道を走って約3時間半。クリムトゥ国立公園に到着した。入り口のゲートまでは、舗装された上り坂を車で約10分。東の空はすでにオレンジ色に染まり始めていた。
 全体の案内図を横目に階段を上がると、土の山道が続く。「たばこポイ捨て禁止」などと書かれた、アフリカ的な色使いの看板が目につく。15分ほど歩くと道が開け、低い丈の高山植物と岩場が続く頂上付近に到着した。
 展望台へと続く階段を上っていると、右手から日が差した。日の出には間に合わなかったんだと、舌打ちをしながら朝日の光をさえぎりながら下手を見ると、思いもよらず緑と黒の湖が目に飛び込んできた。
 展望台では、先に到着した観光客約20人が思い思いの時間を過ごしていた。白の湖は霧がかかっていた。喉が渇いたのでコーヒー売りのマテウス・シノさん(34)に話しかけると、クルムトゥ山の3色湖にまつわる話を教えてくれた。
■最初は赤・緑・白
 「かつてそこには一つの山があった」。クリムトゥ山から3キロ離れたペモ村から毎朝妻と二人で国立公園まで歩き、展望台で店を開くシノさん(34)は話す。1018年の噴火で、三つの湖ができた。シノさんが祖父母から聞いた話では、「湖はできた当初から赤、緑、白の3色だった」という。さらにシノさんは「2014年ごろに赤が黒に変わり、つい3カ月ほど前には白が緑に変わった。いずれもわずか1日の出来事だった」と話す。
 村民にとって3色の湖にはそれぞれ意味がある。ペモ村の言葉で、赤の湖は罪人を表す「アタ・ポロ」、緑の湖は子どもや若者を表す「コオファイ・ヌワムリ」、白の湖は年老いた者を表す「アタ・ブプ」。「村人の魂は死んだ後にそれぞれの色の魂に帰る。どこの国にいても、死んだ後はここに戻ってくるんだ」
 カトリック教徒が多いペモ村には古くから伝わる「ジョカテ」と呼ばれる慣習がある。8月14日に「パティカ」という儀式が湖の近くで行われる。儀式は、湖に眠る魂に供物を捧げ、死者を弔うために毎年開催している。供物となるのはブタの心臓だ。と殺後に取り出してその一部を、3色湖へ向かう階段の少し下にある「ムス・マセ」という大きな石に赤飯とともに供える。ブタの他の部分は調理され、村人や来場者にふるまわれる。
■キスもできない
 「未婚の男女が一緒に来ることはできない。時に恐れられる場所。私たちにとってクリムトゥ湖は神聖な場所。ここではキスもご法度」とシノさん。村で採れるトゥンブコーヒーを、シノさんと一緒にすすりながら、アタ・ブプにかかった霧が晴れるのを待つ時間が心地よかった。ショウガと砂糖が入った優しい味が体に染みた。
 クリムトゥ国立公園は、東ヌサトゥンガラ州エンデ県クリムトゥの一大観光地。公園入り口付近にはモニ村がある。毎日、国内からは100人、国外からは50人ほど訪れる。入場料は1人あたり月〜土曜はインドネシア人5千ルピア、外国人1万5千ルピア、日曜祝日はいずれも料金が1.5倍となる。開園時間は午前5時〜午後5時半。(中島昭浩、写真も)

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