新たな商機を求めて  「我慢の時期後」見込む マニュファクチャリング・インドネシア2015 来月2日開幕 世界26カ国・地域から2000社

 第26回マニュファクチャリング・インドネシア(MI)2015が12月2日、中央ジャカルタ・クマヨランのジャカルタ国際展示場(JIエキスポ)で開幕する。東南アジアで最大級の工作機械・産業機械・工具メーカーの総合見本市で、同時に開催される三つの見本市も合わせて、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、米、英、独など世界26カ国・地域の企業が参加する。昨年より3千平方メートル広い約3万7千平方メートルの会場に、2千社近い企業が商機を求めて出展する。会期は5日まで。主催するパメリンド・インドネシアでは、4日間の会期中に約3万8千人の来場を見込んでいる。

日本の直接投資は低迷

 日本国内の関連産業界の注目度も高く、日本貿易振興機構(ジェトロ)が確保した「ジャパン・パビリオン」のブースには、全国から中小企業43社が参加するほか、企業単独あるいは代理店を通す形で日本からは昨年並みの約250社の出展が見込まれている。工作機械メーカーや工具メーカーにとりその技術と製品をアピールする絶好の機会であり、販路の開拓や拡大を目指す。また中小企業では、この機会に販売代理店など現地のパートナー企業を探すところも多い。

 「政府の社会インフラ投資や自動車メーカーのモデル更新需要から来年は受注の増加が少しは期待できる」――ことし1〜10月の四輪車販売台数(工場出荷ベース)が昨年同期に比べ2割近く落ち込むなど、消費の低迷で抑制を迫られていた設備投資が動き出す兆しをみせている。
 投資調整庁(BKPM)のまとめによると、ことし1〜9月の直接投資額は400兆ルピアと過去最高を記録したが、ルピア安の影響でドルベースの外国直接投資(FDI)は214億ドルと前年同期の217億ドルに比べて若干の減少となった。「13年はブーム、昨年は低迷、ことしは後退だ」――業界関係者は最近のインドネシアでの投資の動きをこう表現する。
 インドネシアの直接投資額は、国内企業の投資とFDIがおよそ1対2の比率で、外国投資への依存度が高い。
 日本からの投資の推移を見ると、10年に7億1千万ドルだった日本からの投資は、11年に15億ドル、12年に25億ドル、13年に47億ドルと倍々のペースで拡大、同年には投資国として首位に踊り出た。だが14年には27億ドルに減少。ことし1〜9月の実績は25億ドルにとどまり、国別でも14年の2位から、シンガポール、マレーシアに次ぐ第3位に順位を下げた。年間を通じても大きな変化は期待出来ないとの見方が多い。
 日本からの機械輸入は、製造業の比率が相対的に高い日系企業の設備投資に大きく左右される。
 ことし末のAEC(ASEAN=東南アジア諸国連合=経済共同体)の発足をにらんだ日系大手自動車メーカーと系列企業の進出・生産能力拡張の動きは取りあえず一巡した感がある。輸出を含む市場の拡大で次の本格的な生産能力増強の時期を迎えるまで、機械メーカーや商社には当面、「我慢の時期」ともいえる。
 メーカーや商社は手をこまねいているわけではない。厳しい環境のなかで次の商機を求めて新たな成長市場の発掘、新たな取引先の開拓を図っている。
 大手メーカーでは、その総合力を活かし、品質向上のための設備投資や、生産工程の一段の合理化を実現するファクトリー・オートメーション(FA)の普及を狙う動きが目立つ。日系企業の進出が先行したタイほどではないが、ジャカルタ近郊の工業団地では、人件費の上昇が続いており、生産コストの抑制と今後の人材不足の発生を見越して生産システムの一括受注を狙う。
 中堅・中小の機械メーカーにとっては、インドネシアは開拓余地が大きい市場だ。タイに比べ製造業を支える地元部品メーカーの裾野は狭く、現地調達比率もASEANの平均を下回る。それだけに地元企業の成長余地は大きく、日系企業が求める品質水準に応えるための設備が必要になる。
 日本からの進出業種も自動車関連中心から、食品、運輸、サービスなどへと多様化してきており、新たなビジネスチャンスを求める地元企業も多い。
 インドネシアでは日本製品の評価は高く、機械・部品の分野でも日本製への信頼度は抜群だ。中国、台湾、韓国、タイ、マレーシアが競うようにパビリオンを出展、インドネシアへの浸透を狙っているが、日本製品の技術力・信頼性の高さを示す絶好の機会でもある。(西川幸男)

経済は持ち直しへ
 インドネシア経済に「薄日」が差してきた。11月6日に中央統計局が発表したことし第3四半期(7〜9月)の成長率(実質GDP=国内総生産ベース)は前年同期比4.73%と、第2四半期(4.67%)からわずかながらも上昇した。
 昨年10月に誕生したジョコ・ウイドド(通称ジョコウィ)政権の下で、経済は低迷を続けてきた。資源大国として依存を強めている中国経済の成長鈍化と資源価格の下落のダブルパンチをもろに受けた。政権移行時につきものの、政策の混乱と実行能力の低下の影響も否めない。ことしの成長率は昨年の5.02%を下回る見通しだ。
 5%前後の成長率は先進国の日本や周辺の東南アジア諸国連合の主要国であるタイやマレーシアに比べると依然として高い数字だが、資源価格の上昇に支えられたユドヨノ前政権時代には6%台の成長が続いただけに、インドネシアにとり厳しいものだ。
 ここへ来て成長率に持ち直しの動きが見え始めたのは、ことし8月の初の内閣改造で4人の経済閣僚を刷新し、「実務家」主導でより現実的な成長に向けて政権が動きだしたことが大きい。執行が遅れていた政府投資も、大統領の号令で、社会インフラ投資を中心に第3四半期に顕著な伸びを見せた。
 外国からの直接投資を呼び込むため、これまでの自国産業保護的な政策を改め、規制の緩和、投資手続きの簡素化などを、一連の経済政策パッケージに盛り込んだ。
 通貨ルピアの下落もあり、産業界には消費・投資の低迷を嘆く声が多い。ジョコウィ政権の思惑通り、社会インフラ投資の拡大を「呼び水」に、消費・投資の拡大につなげられるか、インドネシア経済はいま正念場を迎えている。

第26回マニュファクチャリング・インドネシア
 12月2日(水)〜5日(土)の4日間、中央ジャカルタ・クマヨランのジャカルタ国際展示場(JIエキスポ)で。開場時間は2日〜4日が午前10時から午後6時まで、5日は午前10時から午後5時。入場無料だが、会場で登録が必要。
 マシンツール・インドネシア▽ツールズ&ハードウェア・インドネシア▽インダストリアル・オートメーション&ロジスティクス・インドネシアの3見本市も同時開催する。
 工業省、国内の精密機械、金型、自動車部品、金属、機械など8団体が協賛する。

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