ボロブドゥール 豪華本出版 ユネスコの長岡さんが執筆  「住民参加型の観光開発を」

 二〇一〇年十、十一月に発生したジャワ島中部のムラピ山の歴史的大噴火で、火山灰に覆われた世界文化遺産ボロブドゥール寺院の保護活動をまとめた写真集「ボロブドゥール・復興への道 地域に基づいた修復作業と持続可能な観光開発」(発行・ナショナル・ジオグラフィック・インドネシア)が出版された。噴火後の遺跡の様子のほか、修復に取り組む住民や地場産業に焦点を当て、世界的な観光名所の周辺地域の潜在力を掘り起こしてほしいと提案している。

 著者は、ボロブドゥール寺院の修復で遺跡群周辺に暮らす住民との共同作業に取り組んできた国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)ジャカルタ事務所の長岡正哲・文化部主任。英語で執筆し、インドネシア語の翻訳を併記。二百三十ページにわたり、インドネシアの写真家が撮影した写真をまとめた豪華本だ。
 表紙や冒頭のページを飾るのは、火山灰に覆われたボロブドゥール寺院。噴煙がたなびくムラピ山を背景に遺跡がそびえる。降雨で降り積もった火山灰が、石材のレリーフ(壁面の彫刻)にしたたり落ちていく様子を写した写真も並ぶ。
 しかし主役はむしろ火山灰除去作業にあたった遺跡周辺の住民たち。マスクや帽子を身に付け、ほうきやブラシ、ちり取り、バケツなどを手に火山灰を取り除き、酸化を防ぐ。表面は一カ月できれいになったが、排水溝の清掃は難航した。さまざまな形をした石材を取り外し、奥に詰まった火山灰を除去してから石材を元の位置に戻す。石造遺跡の専門家が指導に当たった。
 ボロブドゥール寺院は昨年九月、最上部まで全面的に一般開放されたが、一年以上費やした清掃作業は今月、ようやく終了するという。

■地場産業で付加価値
 ユネスコの事業として地域住民に参加を呼び掛け、遺跡群の修復活動に取り組んできた長岡さんは「まず自分たちが遺跡を守っていくんだという意識を持ってほしかった」と話す。民間企業の賛同も得て、日当三万五千ルピアを支払うことで、ムラピ山噴火の影響で仕事を失った住民の支援にもなった。巻末には、参加した住民六百人全員の名前を記して謝意を伝えた。
 今後の課題は地場産業の活性化だ。ユネスコが世界文化遺産に認定し、寺院の公園整備とともに農地を奪われ、その後も観光開発の恩恵を受けていない住民は観光客にまとわりつく物売りになるしかなかった。
 長岡さんは、現在、二、三時間に限定されている団体客の遺跡観光に付加価値を付けることを提案する。園内にはカフェやレストランもなく、遺跡に登って記念撮影し、木陰もなく暑かったという印象を持ち帰るだけの現状から脱却する必要があると語る。
 「馬車に乗って周辺の村落を回り、田園から遺跡群を眺めたり、ドリアンなど地元産の果物を食べる機会を設けるだけで、住民が観光開発に参加できるようになる」と強調する。
 車で約一時間のジョクジャカルタに依存する土産物産業にも注視。遺跡周辺では、果物や丁字の栽培、麺や豆腐の生産、土器、竹細工、木工品、ワヤン人形といった手工芸品をはじめ、火山岩を利用したインテリアなどの商品開発も可能という。
 本には地場産業など地域の潜在力を示す写真を多数掲載。インドネシア政府が進めてきた法整備にも言及しながら、住民参加型の観光開発を論じた。
 長岡さんは「ユネスコという中立的な立場から、中央政府、地方自治体、民間企業、住民が集まる場を設け、地域活性化について話し合いを始めている。手工芸品などにしても、ちょっとしたアイデアを提供するだけで質向上につながる」と述べ、幅広い分野の人々に協力を呼び掛けている。 
 本は二十五万ルピア。ウェブサイト(http://nationalgeographic.co.id/)で購入できる。収益金は全額、ボロブドゥール寺院の保護活動資金に充てる。

◇読者5名にプレゼント(※現在は終了しています)

 長岡さんのご厚意により、「ボロブドゥール・復興への道」の本をじゃかるた新聞の読者5名様にプレゼントします。応募はじゃかるた新聞編集部までメール(news@jkshimbun.com)で。「ボロブドゥール本希望」とのタイトルで、購読者氏名、連絡先、住所を明記。じゃかるた新聞へのご意見・ご感想もお願いします。締め切りは十二日正午まで。抽選の上、当選者にはメールでご連絡した上で弊社から郵送します。

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