【じゃらんじゃらん】国家英雄生誕の地 植民地時代の香り漂う マルク州アンボン島・サパルア島

 現在のマルク州出身で、オランダの植民地支配に抵抗したことで知られる国家英雄トーマス・マトゥレシー(通称パティムラ、1783〜1817)とマルタ・ティアナ・ティアハフ(1800〜17)。今も敬愛されている人物の生誕の地、マルク州アンボン島とサパルア島を訪ね歩いた。

 パティムラは1817年にオランダの植民地支配に反乱を起こして、サパルア島で捕まり、アンボンで処刑された。千ルピア札の肖像の人物としても有名だ。アンボン市の中心地である市庁舎広場にはパティムラの銅像がある。広場近くには99〜2002年に発生したキリスト教徒とイスラム教徒による内紛の終結を記念したモニュメントがある。内紛時にNGOで働きながら人道支援を行ったアディさんによると、キリスト教徒とイスラム教徒の居住区はモニュメントを境にするよう概ね決まっていて、平和に見える町並みにも内紛のしこりは残っているという。
■女性初の英雄
 マルタ・ティアナ・ティアハフも、1817年にオランダへの抵抗運動で17歳の若さで戦死したとされ、女性として初の国家英雄に認定された。ティアハフの銅像は、アンボン市内の高台に設置され、いまもアンボンを含むマルク諸島を見守っている。市外が一望できる高台では、左から教会の鐘の音が聞こえたと思えば、右からはイスラムのアザーンが聞こえ、二つの宗教が共存していることが分かる。
 アンボンはいまもオランダ植民地時代の名残があり、オランダとの繋がりを感じさせる。その一つが、中心地から少し離れた所に位置するコーヒー屋「シブシブ」。ショウガとナッツをあしらったコーヒーと、蜂蜜とチーズがかかったクエ(ケーキ)は、植民地時代から変わらぬ味で地元の人に愛され続けている。店内にはアンボンからオランダに渡り、アンボン系オランダ人として活躍したサッカー選手や女優などの写真が誇らしげに並んでいた。現在もオランダで暮らしているアンボン系オランダ人は、2世3世を含めると10万人程度が住んでいると言われている。
 アンボンでは昔から犬肉を食べる習慣があり、犬料理が名物だ。現在ではあまり見かけなくなったが、町中の伝統市場(パサール)で犬肉を探し歩くのもおもしろい。記者が訪れた、市内から少し外れた伝統市場では、その場で煮込んだり焼いたりして調理してくれた。味は堅く、臭みがあるが、言われなければ犬肉だとは分からない。
■海とハンモック
 パティムラの生誕地サパルア島は、アンボンから東に約50キロ。定期船で1時間半程度で着く。港からバイクで40分ほど走ると、パティムラの生家がある。生家にはパティムラが着ていたという服や肖像などが展示されている。管理人は「僻地にあるけど、インドネシア人、外国人問わず毎日のように来客がある」と話してくれた。
 島内にホテルは何軒かあるが、滞在先は島の西端にあるクルール村の「プティ・レシ・インダ」がお勧めだ。施設は簡素ながら、ロッジがプライベートビーチに面していて、真っ青な海でシュノーケリングを楽しめる。疲れたらハンモックに揺られながら、海に沈む夕焼けを見て、夜にはさざ波の音を聞きながら満点の星空を見てはいかがだろうか。(藤本迅、写真も)

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