野球アジア選手権、急造チームで 代表選手、大半が国体へ 連盟が予選延期せず重複

 インドネシア・アマチュア野球・ソフトボール連盟(シャリル・ナウィル会長)が主催する州対抗の野球国体(PON)予選とアジア選手権の日程が重複することになった。連盟が国体予選を延期できなかったためで、東アジアカップ(5月)で準優勝したチーム選手の大半が国体予選を選択した。選手権は、残った4選手と元代表選手などを寄せ集めた急造チームで戦うという、異例の事態になっている。

 国体予選は12〜20日にジャカルタで、アジア選手権は16〜20日に台湾で開かれるため、両方への出場はできない。州代表チームは選手にとって基礎となる所属先。国体は結果が州チームの予算増減に関わってくるため、州代表にとって重要な大会。「(日程が重なる)国際大会を代表選手が選択するのは難しい」(連盟関係者)という。
 アジア選手権に参加するのは、東アジアカップの準優勝メンバーのうち投手4人のみ。エース級の2人は国体を選んだ。野手は全員不参加。代わりに出場するのは野中寿人監督が率いた2009年のアジアカップで優勝後、11年に引退した選手や、ソフトボールに転向した選手など。野中監督は「ソフトボールの選手は実力や経験は問題はないが、引退した選手は本格的に野球をやるのは4年ぶり。体力的に相当厳しい」と話している。
 ナウィル会長によると連盟は昨年、ソフトボールと野球の国体予選日程を9月に設定。その後、アジア選手権の日程がかぶさった。重複が明らかになった時点で代表チームは連盟に国体予選の日程変更を要請し、会長は「アジア選手権への出場が決まれば、野球のみ国体予選の日程を延期する」と言明していた。
 準優勝に終わった東アジアカップの閉幕時点では出場権はなかったが、出場枠が増え7月に突然出場が決まった。しかし会長は、「延期に反対する州がある」との理由で据え置いた。「突然の出場決定で延ばせなかった。日程をずらせば各州はその分練習の経費などがかさむため反対された」と話している。
 連盟のミスは立て続けに表面化している。ソフトボール代表は世界男子選手権大会(カナダ、6月)に出場予定だったが、大会1週間前に連盟は資金難を理由に出場取りやめを宣言。カナダへ飛ぶつもりで準備を進めていた選手は「寝耳に水の決定」(ソフトボール代表選手)で引退を決意する選手も出た。
 「一連の混乱で野球・ソフトボール関係者は連盟幹部の指導力不足に不信を抱き、怒りが溜まっている」(連盟関係者)ため、関係者が集まる国体予選の際に幹部の責任を問う声が高まるとみる向きもある。

■日系企業、支援の思い 選手の延期要請通らず
 重複した国際大会と国内大会の日程を変更できなかった連盟の責任は重い。
 選手層の厚い日本と違い、インドネシアは代表候補自体が少ない。東アジアカップの準優勝メンバーは多くが国際大会の経験がほとんどない若手チーム。彼らが、日本も参加するアジア最高峰の舞台で得るものは大きい。連盟は反対する州を説得し、国体予選を延期すべきだった。
 関係者によると、日程延期に反対した州は2州のみで指導力を疑問視する声が出るのは当然だ。8月にドニー主将ら選手7人が日程変更をナウィル連盟会長に直訴したが、受け入れられなかった。
 チームは野中監督が中心となりアジア選手権出場のためと日系企業を中心に資金を募り、チームは期待に応えた。次のステップを見据え、アジア選手権に挑む時に、内部からはしごを外された格好だ。
 東アジアカップ準優勝メンバーのうち、アジア選手権に出場するのは4人のみ。危機感を抱いた代表チームが慌てて引退選手やソフトボール選手の参加を説得しなければ代表チームの人数さえそろわなかった。
 連盟が目指してきたのは野球のレベル底上げと代表チームのブランド確立、地元企業からの資金確保。野中監督と日系企業はその流れが定着するまでの手助けという位置づけだ。
 これまで集めた日系企業のスポンサーは60社。多くは野中監督の思いに共感し、「インドネシア野球界発展のため」と資金を出している。連盟は自らその大義名分を否定するようなその場しのぎの運営を止め、透明性の向上を示し続けなければ継続的な資金調達は難しい。(堀之内健史、写真も)

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