戦場で少年が問う人間愛 アニメ「スラバヤの戦い」 8月20日公開 日本人も声優で

 第二次世界大戦終戦から70年。しかし、インドネシアにとって1945年8月は「戦後の夜明け」ではなく「独立戦争の始まり」だった。この発端となった同11月の「スラバヤの戦い」を描いたアニメ映画「バトル・オブ・スラバヤ」が8月20日、劇場公開される。戦禍に巻き込まれた少年の目を通じて、人間愛とは何かを問いかける。インドネシアで初の本格的長編アニメ(制作元)で、質の高い作品を追求。日本関連のシーンもあり、日本人3人が声優で参加している。                         
 主人公は靴磨きのムサ。心優しい13歳の少年は、爆撃を受けた敵兵の手当てをする。そんなムサがある日、設立されたばかりの国軍とスラバヤ民兵との間の機密文書伝達役を任される。しかし森の中で英軍につかまり、拷問を受ける。失望するムサを支える少女と青年の3人を中心に繰り広げられる、勇気と祖国愛、平和をテーマにした戦争アニメだ。副題は「戦争に栄光はない」。
 スカルノ・ハッタ初代正副大統領など歴史上の人物に架空のキャラクターを絡め、シリアスな戦争映画だが子どもにも分かりやすいストーリー作りに工夫した。民衆に「ムルデカ(独立万歳)」と抗戦を呼びかけたゲリラ指導者ストモ(ブン・トモ)氏の演説シーンでは、残された本人の音声にアニメの動きを合わせ、現実味を出している。
 冒頭は、日本に原爆が落とされる場面から展開し、日本敗戦と連合軍のインドネシア最上陸、スラバヤの戦いへと至る歴史の流れを描写している。戦い勃発の一因となり、オランダ人が蘭国旗を掲揚したヤマトホテル(現ホテル・マジャパヒト)事件のシーンもある。
 制作したのは、ジョクジャカルタにあるMSVピクチャーズ・アニメーション・スタジオ。3年がかりで、制作費は約150億ルピア。数年前に完成していたが、主要なキャラクターの声優を代えるなど一部リメイクし今年、劇場公開に至った。主人公ムサを支える少女ユムナは新進女優・歌手のマウディ・アユンダ、青年ダヌは人気男優レザ・ラハディアンが、それぞれ声を演じている。
 アルヤント・ユニアワン監督はインタビューで、「将来、インドネシア・アニメの開拓者となるよう、技術・ストーリーともに質の高い映画作りにこだわった」と話している。アニメーターは登録約400人の中から10〜15人に厳選。声優も、オーディション審査で決めた。
 キャラクターの表情には日本アニメの影響が見られるが、全体ではハリウッド風を意識。キャラクター・グッズ戦略も視野に入れている。アルヤント監督によると、米ウォルト・ディズニーが世界への配給に関心を示しているという。
 これまでに国内で数々の賞に輝いたほか、米国の「国際映画予告編フェスティバル」では13年、人気投票で最優秀賞を獲得している。(前山つよし)

◇ スラバヤの戦い 日本敗戦後、連合軍を代表する英軍がインドネシア国内に残っていた日本軍の武器引き渡しとオランダ軍指令部への抗戦停止を1945月11月10日までに実施するよう通告した。
 国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)創立者ハシム・アシャリが、連合軍への抵抗は「ジハード(聖戦)」とする宗教見解を表明。当時のインドネシアではまだ中央政府と国軍が十分には機能しておらず、イスラム指導者から大義名分を得た指導者ストモ氏が演説などを通じて、対連合軍の戦いに参加するよう民衆に呼びかけた。同時に女性と子どもをスラバヤから避難させた。
 通告期限の同11月10日、英軍は空爆や戦車による大規模攻撃を開始。民兵を中心としたインドネシア側は銃器や竹槍などで激しく抗戦。戦いはスラバヤ陥落まで約3週間続いた。死者は連合軍側が多くて約2千人、インドネシア側は6千人とも1万6千人とも言われている。この日は現在、「英雄の日」に定められている。

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