「ジョコウィ現象」再現も ユドヨノ後の2014年大統領選 松井氏、JACで講演会

 ビジネスサポートなどを行うJACビジネスセンター社は2日、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の研究員や国際協力機構(JICA)として30年近くにわたり現場でインドネシアの動向を観察してきた松井和久氏を講師とし、「ポスト・ユドヨノのインドネシア政治を占う」をテーマに講演会を行った。スハルト政権末期の混乱から3代の短命政権を経て誕生し、社会の安定をもたらしたユドヨノ政権が2014年、上限となる2期の任期を満了するが、松井氏は「ユドヨノの10年」の次を誰が担おうと、政治・経済の大きな流れは変わらないと強調。好調な経済が持続すれば、次期大統領には新世代の政治家が選出される可能性があるとの見通しを示した。(関口潤、写真も)

■10年で体制様変わり 今後も安定変わらず
 98年のスハルト政権退陣後、体制が様変わりし、「同じ国として連続して成り立っているというのが不思議なくらい」と評する松井氏。現在のインドネシアは政権内外に多少の問題を抱えつつも、ユドヨノ氏は50%ほどの支持率を維持しており、安定政権が続いているという。
 インドネシア社会の安定の要因として松井氏は、好調な経済を前提とした上で、各政党の主義・主張がはっきりしないことや、政治と実生活が乖離(かいり)していることなど、民主化の過程で政治体制が過渡期的な状況となっていることが、逆説的に対立が先鋭化しない構造を生み出していると指摘。
 1990年代には高度成長を謳歌しながらも97―98年の通貨危機時は社会危機にまで発展したが、現在は資金調達の手段多様化や投機筋への対抗措置などによって通貨危機が生じるリスクが低下。反華人暴動や宗教の政治利用が国家的に広がる可能性も低くなっていることから、社会不安も生じにくくなっているとして、今後も安定は続いていくとの見通しを示した。

■ダフラン大臣に注目 経済不調なら旧世代
 現在の政治状況については、各党による「汚職疑惑の摘発合戦」という様相となっており、これまでの政界を引っ張ってきた各党首領クラスが支持を集めにくい状況になっていると指摘する。
 そんな中、先月行われたジャカルタ特別州知事選の第1回投票で、「よそ者」でジャカルタに強固な支持団体がない中部ジャワ州ソロ市長のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)知事候補が躍進した。首都知事選は世代交代や変化を待望する空気の表れだとし、現役閣僚でありながら庶民感覚を発揮し、異色の存在となっているダフラン・イスカン国営企業担当相や、ジョコウィ氏のように地方政治で実績を上げた政治家ら「新世代」が有力候補に押し上げられる可能性があると説明した。
 一方で、経済が急激に悪化した場合には保守的な傾向が強まり、強い指導者のイメージがあるプラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官(グリンドラ党最高顧問会議議長)ら「旧来候補」に支持が集まる可能性があると指摘した。
 松井氏は、今年に入って顕在化している労働争議についても言及。政治への距離が遠くなり、かつてのような大衆動員が難しくなる中、労働争議が数少ない有効な動員装置となっており、特定勢力による労働争議の政治利用が進む可能性があるとして、注意を促した。
 松井氏はこのほど、JACのシニアアドバイザーに就任。今回の「第1回JACインドネシア・ウォッチ講演会」には、今後のインドネシア政治の動向は企業経営にも重要であるとして、企業関係者ら約70人が訪れた。JACは今後も、松井氏を講師とする講演会を随時開催していく予定。

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