餅つきで交流の輪 南国で伝統体験を 秋田出身の安倍さん

 日本の年末の風物詩、餅つきのベテランがジャカルタにいる。安倍(あんばい)正男さん(61)。日本人の集まりやジャカルタ日本人学校(JJS)などで10年以上餅つきを教えてきた。「木の臼(うす)と杵(きね)を使ってついたおいしい餅の味を知ってもらい、餅つきを通じて交流の輪ができれば」と笑顔で話す。

 安倍さんは建設関係の仕事で1994年に来イ。妻と中学3年生の長男、同1年生の長女の4人家族。餅つきに関わったきっかけは、当時長男が通っていたJJS幼稚部のもちつき会でコシのない「のり」のような餅を見たことだった。「幼い頃から餅つきに親しんできたので、おいしい餅の作り方を教えられる」と思ったという。
 安倍さんは秋田県の生まれ。ふるさとでは年末だけでなく、田植え前や稲刈りなどの祝い事がある度に、家族や近所の人が集まって必ず餅つきをしていた。「みんなで集まってわいわいやるのが楽しかった。父ちゃんが餅を杵でついて母ちゃんが餅をひっくり返す。互いの信頼関係がないとできない」と振り返る。 近年、普通の家庭では市販の餅を購入したり機械で作ったりすることが多く、臼と杵を使って餅を作ることはほとんどなくなった。「若い親の世代が、餅つきの方法を知らないのも仕方がない」。そのため安倍さんはもち米の下準備や蒸し方から餅のつき方まで一から丁寧に教える。
 安倍さんによると、おいしい餅を作るには蒸す作業が一番重要で、下準備の段階で味が決まるという。もち米は前日から水につけた後、最低でも2、3時間かけて水を切る。蒸し始めてからはむらが出ないよう途中で一度もち米をひっくり返す。最後に水分を吸って伸びたもち米をしめるために冷水をかけ、再度蒸す。「おいしい餅を作るには手間も時間もかかる」という。
 「日本でもやらないことを遠く離れた南国の地でやるのが面白い。今後も日本の伝統文化を若い世代に伝えていきたい」と意欲を見せる安倍さん。餅つきはもち米と臼と杵があり、手順さえ覚えれば誰でもできる。「みんなの手で作ったできたての温かい餅を食べれば、心もあったかくなる」と笑顔を見せた。(毛利春香)

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