鹿取大使夫妻が訪問 東カリマンタンのBOS オランウータンと交流 ブリヂストンの支援も

 先月9―13日、鹿取克章・駐インドネシア日本大使夫妻が、東カリマンタン州を訪問した。数日にわたる同州の日系関連企業視察の後、同州サンボジャにあるボルネオ・オランウータン・サバイバル・ファウンデーション(BOS)を視察。その時の様子をBOSのブンガラン・サラギ理事長(元農相)の妻、中村美芳子さん(67)が紹介する。
 大使夫妻一行は州都バリックパパンから車で1時間ほどのオランウータンの保護・リハビリ施設「サンボジャ・レスタリ」に到着し、BOSのジャマルティン・シヒテ所長、同施設のアセタ・タジュデイン・プログラム・マネジャー 、BOS日本の宮崎林司代表理事のほか、サラギ理事長の代理として妻の私が出迎えた。
 視察に合わせ、環境に優しい事業としてオランウータンの保護を掲げるブリヂストン・タイヤ・インドネシア社の支援の寄贈式が行われた。同社の熊野純一社長がジャマルティン所長に手渡した寄贈リストは、(1)2頭の子どものオランウータンの里親になること(2)1ヘクタールの土地に植林し、8年間管理すること(3)寄付金4千万ルピア(4)BOSが所有するすべての車のタイヤの寄付。鹿取大使はブリヂストン社の支援活動を評価するとともに、他の企業、団体、特に日本人社会からの支援が続くよう願うとのメッセージを伝えた。
 ジャマルティン所長は、今回の支援は大変心強いとした上で、二酸化炭素の排出を相殺(そうさい)する事業などを通じ、オランウータンの保護と生態系回復・保全活動のための植林事業を支援することを決めたNECフィールディング社にも言及、双方に感謝を述べた。
 大使一行は、リハビリ・センターを視察した。保護されているオランウータンは220頭ほど。しかし多くは後方の山の中腹の大きな檻(おり)に住み、野生に戻るための訓練を受けており、そこへは一般の人の立ち入りはできない。
 一方、自立不可能な病気のあるもの、人間社会に慣れ過ぎてしまったものなどは、小さな川で仕切られた複数の島におり、一般の訪問者も見ることができる。この日は特別にオランウータンの赤ちゃんたちの家に入り、オムツを履いた数頭と真近に接した。赤ちゃんたちは母親をアブラヤシ農園などで殺されて保護されたのがほとんど。大使夫人は彼らのあどけない目やしぐさに魅せられた様子だった。
 その後、大使夫妻はアイアンウッドの苗を一本ずつ植樹、鹿取大使はいつかまた訪問してその木の成長を見たいと述べた。
 夕食後、長年の間の念願となっており、今年再開されたオランウータンの野生の森へのリリースの様子を描いた記録フィルムを鑑賞した。
 麻酔をうち、檻に入れて、ヘリコプター、トラックと徒歩で数時間かけ、ジャングルの奥深くまで運ぶ。道中では大雨のため、川の水かさが胸の高さまで増している。オランウータンたちが濡れないように運ぶBOSの人たち。
 鑑賞後、大使一行は、リリースに並大抵でない肉体的、経済的な努力が払われていることを知り、関係者たちに改めて敬意を表するとの感想を述べた。
■地球温暖化の解決にも
 数年前、オランウータン4頭が大阪からBOSに戻された。2006年には48頭のオランウータンがタイから戻され、中部カリマンタンのBOSリハビリ・センターに引き取られた。その時のハリム空港(東ジャカルタ)での引き渡し式に私も立ち会ったが、48頭はタイでボクシングなどの見せ物にされており、大部分が野生に戻るのは不可能なようである。
 政府の「2015年内に人間の手元にあるオランウータンを野生に戻す」という宣言の下に、実施を託されたBOSはまだ東、中部カリマンタン両州で850頭を保護しているが、一番の問題は活動資金。400人以上のスタッフを抱え、原生国有林を管轄下に置き、オランウータンを保護し、野生に戻す事業に莫大(ばくだい)な費用がかかる。
 森の学校で野生に戻るための訓練をし、最後にリリースした後も6カ月間、個体に付けた送信器でモニターをするが、国の資金援助はない。広大な国土と膨大な人口を抱えたこの国では人間社会のさまざまな問題を解決することを優先するのが当然であろう。
 しかし4月のアースデー(地球の日)に合わせ6頭がリリースされた時には、経済担当調整相、林業相、環境相の3大臣が列席したことでも分かる通り、オランウータンはインドネシアのアイコンで、オランウータンを守ることが森を守ること、そして、それが地球の温暖化をも解決することにつながると信じている。
 BOSは今年8月、11月、12月にも次のリリースを計画している。今回の訪問と支援を機に、カリマンタンと関係がある日本人や企業が、オランウータンの保護と野生に戻すための活動に援助の手を差しのべてくれることをBOS一同、願っている。(ペンネーム・沙羅木美芳子)
■連絡先
 オランウータン保護活動に関心のある方は、下記までご連絡下さい。
■BOSファウンデーション
 住所: Jl. Papandayan No. 10, Bogor, 16151
 メール bosfundraising@orangutan.or.id
 ウェブサイト www.orangutan.or.id
 (電話)0251・831・4469/68/(ファクス) 0251・832・3142
■BOS日本
 住所:東京都西東京市田無町3の5の4
 (電話)042・451・5346
 メール info@bos-japan.jp
 代表理事の宮崎林司さんまで。

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