タンカー狙う海賊急増 マ・シ海峡や南シナ海

 インドネシア近くのマラッカ・シンガポール海峡や南シナ海で、タンカーから油を抜き取る海賊・武装強盗被害が今年上半期で5件起き、年間の既遂事件が1、2件だった過去3年と比べて急増していることが、アジア海賊対策地域協力協定(RECAAP)情報共有センターのまとめで分かった。

 まとめによると、被害は今年4月中旬から6月中旬に集中して発生。現場は4件がリアウ諸島州やマレーシア、カリマンタン島北部沿岸の南シナ海、1件がマレーシアのポート・クラン沖マラッカ海峡だった。5件以外にも、油を積んでいる船だと勘違いしたとみられる海賊がアスファルトを運搬中の船に乗り込む事案もあった。
 上半期のまとめには反映されていないが、7月に入ってからも南シナ海周辺で3隻が襲われ、うち2隻から油が抜き取られた。これを含めると今年の既遂事件は7件、未遂は2件、奪われた油の総量は1万1400トンに上る。油を狙った事件は2011年に1件、12年に1件(未遂は3件)、13年に2件(同1件)だった。
 犯行のほとんどは、スピードボートで近づいた数人から十数人のグループがタンカーに乗り込み、拳銃などで船員を脅した上で別に用意したタンカーを横付けし、油を移し替える手口。発覚を遅らせるため、被害船の通信機器を破壊し、船名や会社ロゴを塗り替えるケースもある。
 燃油は他の金品と異なり、転売しても出所の特定が難しい上、価格も高止まりしている。同センターによると、以前はあまり見られなかったタンカー同士の接近だが、11年の国際条約改正でルールが定まり、船舶間の貨物油積み替えが認められるようになった。このため、実際には海賊が油を抜き取っていても第三者が異変に気付きにくくなり、被害増加の遠因になっている可能性もある。
 アジア全体で上半期に起きた海賊・武装強盗は、未遂も含め前年同期比12件増の73件。このうち、マラッカ海峡を除くインドネシア領海での発生件数は20件で、前年同期から半減した。ただ、インドネシアとシンガポール、マレーシアが領海を接するマラッカ・シンガポール海峡は、前年同期の3件から今年23件に急増している。(道下健弘)

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