「疑似中間層」急増 下町の消費が多様化 倉沢・慶大名誉教授 教育熱・食の欧米化健康志向・小口融資

 新興国として注目を集めるインドネシアで、所得は低いが中間層の真似をして近代的な生活をする層が急激に増えている。インドネシア研究者の倉沢愛子・慶応大名誉教授は、ジャカルタのカンプン(下町)の消費変容に関する独自調査を実施。19日、日本貿易振興機構(ジェトロ)と中小企業連合会(SMEJ)が開いたセミナーで、教育熱の高まりや食の多様化、健康志向、小口融資などを切り口に「疑似中間層」の実態を解説した。
 世銀の中間層定義では最下層の1日2〜6ドルの支出で生活する層を、倉沢氏は「疑似中間層」と位置付けている。この層が大半を占める南ジャカルタ・レンテン・アグンのカンプンの消費変容について、倉沢氏は1998年〜2000年と11年〜12年、独自調査を実施した。

■親の上昇志向
 特に教育熱が高まっている。政府は03年以降、2歳からの早期教育を奨励。これに「親の上昇志向」が相まって、カンプン内の民家に次々と「プレイ・グループ」と呼ばれる民間教育施設が開設されている。調査したカンプンの家庭では、ほとんどの子どもがここで国語などを学んでいたという。
 進学塾や「エリート」中学・高校も急増している。倉沢氏は「親戚から借金をしてでも、学費の高いエリート学校に入学させる家庭が増えた」と指摘する。
 調査したプレイ・グループは月謝5万ルピア(約450円)と安いものではない。「教育は上層へ上がる一番の近道。そのために『投資』する親が急激に増えた」と親の意識の変化を強調した。

■チーズも浸透
 「バウ・ケジュ(チーズ臭い)」。昔はオランダ人のことをこう呼ぶ人が多く、チーズは好まれなかったという。食は保守的とされるインドネシア人だが、今は米系チェーンのピザハットなどが各地で展開。倉沢氏は「自宅の冷蔵庫には10年前は考えられなかったチーズやマヨネーズが常備されている」と指摘する。
 健康志向も高まった。10年前は誰も知らなかった「消費期限」を誰もが気するようになり、「オーガニック野菜」も健康に良いものとして急激に認知が進んでいるという。
 「多く食べ、太っていること」が健康的とする価値観が変わり、細い体系が好まれるようになった。カンプン内にもエアロビクスが開業。「健康的」な身体作りに励む女性たちの姿が目立つ。変化は特に若者の間でよく見られるという。

■雰囲気を満喫
 消費の変化を企業や金融が後押しする。マクドナルドやケンタッキーはご飯のような低額のメニューを用意。カンプン内の人にとり、ショッピングモール内のエアロビクスは高いがカンプン内の店には行ける。低所得者層には本来の3割ほどの値段で通える幼児教育施設もあるという。
 10万ルピア(約900円)の「よそ行き用の豪華な服」も分割で買えるほど、マイクロファイナンス(小口融資)が発達した。倉沢氏は「これらが低所得者でも中間層の雰囲気を満喫することを可能にしている」と分析した。(堀之内健史、写真も)

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