メディアに政治色 バクリー売却で業界再編 TVワンとANTVはどこへ

 財閥バクリーグループはグループ別テレビ業界4位のフィシ・メディア・アジア(フィファ・グループ)の株式売却を進め、同1位の財閥MNCと同2位の財閥CTコープが交渉している。3者を率いるメディア実業家はそれぞれ政界に進出・関与しており、売却成立で誕生が見込まれる「巨大メディア」を通じた偏向報道が、言論の自由をおう歌してきたインドネシアのメディア界に深刻な影響を及ぼしそうだ。

 これまでの報道によると、バクリーは共同創業者ナサニエル・ロスチャイルド氏との経営紛争を抱える英石炭ブミからグループの石炭事業を切り離すため、時価で約8億ドルのフィファ株式51%を、12億〜20億ドルで売却して資金調達することを考えている。
 株式売却報道をめぐり、フィファ広報は5日、ジャカルタ証券取引市場で「株主は協力の可能性を探っている」と認めた。巨大メディア誕生への期待感から、同市場上場のフィファの株価は今月1〜5日の間に4割も上昇した。
 判明している買収提案者は2人。昨年末にバクリーの高速道路事業を買収したMNCのハリー・タヌスディビヨ代表が先に名乗りを挙げ、CTコープのハイルル・タンジュン氏も先月29日「100%現金買収提案」で追いかけた。
 ロイター通信が政府資料として報じたところによると、視聴率シェアは3局保有のMNCグループが38%、2局のCTコープ傘下のトランス・コープが24.8%、同じく2局のエムテック・グループが23.8%。3グループで民放11局のうち7局、86%を占める。
 フィファの12年9月の報告書によると、傘下のANTVが視聴率シェア7.2%(1〜9月換算)、ニュース局TVワンが4%前後(同)。合計約11%の取り込みを上位2社が狙う構図。MNCが買収すると視聴率の約5割、CTコープの場合も35%超を獲得するため、熾烈な買収競争が起きていると予想される。
 メディア所有者の政界進出は目覚ましい。メディアを所有する政治家同士の小競り合いも演じられてきた。ハリー氏は国民民主党(ナスデム)に加わり、党最高顧問スルヤ・パロ氏の所有するメトロTVとともに党の宣伝を展開、相乗効果が期待された。しかし、ハリー氏はパロ氏と対立し、配下の党員とともに小党ハヌラ党に移籍した。2月に市民団体「インドネシア統一(プリンド)」を旗揚げしており、19年の総選挙には新党で臨む構えだ。
 一方、ハイルル氏もユドヨノ政権の経済諮問機関国家経済委員会(KEN)の委員長を務め、燃料補助金問題などで政権の経済政策策定を側面支援している。売却側のバクリーグループを率いるアブリザル・バクリー氏はゴルカル党党首で同党の14年大統領選候補に決定しており、自局のTVワンで自身の政治活動を伝えるニュースや略称「ARB」を広めるCMを放送。メディアの中立性が改めて問われている。(吉田拓史)

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