アジアの変化の影響探る インドネシア科学院とセミナー 京大東南アジア研究所

 京都大学東南アジア研究所、インドネシア科学院(LIPI)、日本学術振興会(JSPS)が共催する国際学術セミナーが9日、中央ジャカルタのLIPIで開幕し、12日までの4日間、日イをはじめとするアジア各国の研究者が東南アジアをフィールドにした研究内容を発表している。急成長する新興国が集まるアジア全域の政治社会的、経済的変化が、東南アジアの都市にどのような影響を及ぼしているかを探る。

 LIPIのルクマン・ハキム長官、東南アジア研究所の水野広祐教授、岡本正明准教授のあいさつで始まった9日のジャカルタの政治に関するセッションでは、インドネシア政治学者のイクラル・ヌサ・バクティ元LIPI政治学センター長が発表した。
 イクラル氏は、昨年のジャカルタ知事選でジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)知事がメディアの寵児(ちょうじ)になって、ファウジ・ボウォ前知事をやぶって当選したことは、スハルト政権崩壊以降の民主化時代において、非常に意義があると指摘した。
 配布された資料では、ジョコウィ知事の擁立に至った経緯として二つの説を挙げた。一つはユスフ・カラ前副大統領がメガワティ元大統領を動かしたとする説。もう一つが、闘争民主党(PDIP)が選挙資金がないためにファウジ前知事支持に傾きかけたところ、プラボウォ・スビアント氏が最高顧問を務めるグリンドラ党が資金のめどをつけたことで、ジョコウィ擁立にかじを切ったという説。カラ氏とプラボウォ氏、次期大統領をうかがう大物2人が浮上するが、イクラル氏は、プラボウォ氏が標榜しているとされる「指導される民主主義」には懸念を示した。
 イクラル氏は、ファウジ前知事が選挙戦で人種、宗教問題を持ち出したことを問題視し、華人のバスキ・チャハヤ・プルナマ副知事の誕生はプリブミ(土着のインドネシア人)と華人の関係にとって良い結果だったと話した。
 立命館大学の本名純教授は首都圏のプレマン(マフィア)について発表。スハルト時代のプレマンは翼賛・大衆動員組織だったが、民主化時代初期の98〜04年には、暴力団の「民主化」が起き、収益源、民族も多様化した。民主主義が比較的安定した05年以降は、外国投資の増加と相まって警備会社のような合法的事業を開業するに至っている。近年は警察がプレマン組織の摘発を進め始めていることに加え、プレマン界自体が寡占的になり市場を分け合うため、抗争から共生に向かう傾向があると分析した。
 セミナー参加者の研究対象地域はジャカルタ、バンコク、マニラの各国首都のほか、カリマンタン島、タイ南部などアブラヤシ農園地帯、国境地帯にまたがり広範に渡る。同日、共愛学園前橋国際大学の新井健一郎准教授、岩手県立大学の見市建准教授らも発表した。
 東南アジア研究所とLIPIは2010年11月にも同様の趣旨でセミナーを京都で開催していた。(吉田拓史、写真も)

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