アナス党首容疑者に 汚職撲滅委 競技場建設で収賄の疑い 民主党に大打撃

 汚職撲滅委員会(KPK)は22日夜、西ジャワ州ボゴール県のハンバラン競技場建設事業などに絡み賄賂を受け取ったとして、汚職法違反などの疑いで、ユドヨノ大統領の支持母体である最大与党・民主党のアナス・ウルバニングルム党首を容疑者に断定した。党内で解任を求める動きを乗り切ったばかりのアナス党首に司直の手が伸び、窮地に立たされることになった。来年の選挙をにらみ、内部対立を解消し、立て直しを図ろうとした矢先の民主党にとって、大きな打撃になりそうだ。

 KPKのジョハン・ブディ報道官は22日午後7時半ごろ、南ジャカルタ・クニンガンのKPK庁舎で記者会見し、「国会議員当時、ハンバラン競技場事業か他の事業のため、物品や金銭の形で何かを受け取った疑いがある」と容疑者に断定した理由を説明。KPKはそれに先立ち、正副委員長5人らによるアナス氏の捜査に関する会議を開き、5人の正副委員長が承認したため、容疑者断定に踏み切ったという。アナス氏に6カ月の海外渡航禁止処分を下した。現職の党首逮捕は、先月の福祉正義党(PKS)のルトフィ・ハサン・イスハック党首の逮捕に続き2件目。
 22日午後、KPKが法務人権省にアナス氏の禁足令を講じるよう手続きをしたとの情報が地元メディアに流出。KPKは金曜日に重要な決定を下すことが多いとされるため、容疑者断定かとの観測が流れていた。
 KPKは19日にアグス・マルトワルドヨ蔵相、21日にムハンマド・ナザルディン元民主党幹部(別の汚職事件で最高裁が禁錮7年の判決後、再審請求)を参考人として聴取。KPKは国営建設会社アディ・カルヤ社からアナス氏に渡ったとされるRVを贈収賄の物証とする方針との見方が上がっている。これに対し、アナス容疑者の弁護人は19日「ナザルディン氏から6億7500万ルピアで買った」と釈明したが、ナザルディン被告は否定していた。KPKは10億ルピア(約970万円)以上の大型汚職事件しか扱わず、RVは10億ルピア以下のため、容疑者に断定したのには他の証拠を持つ可能性がある。ブディ報道官は、物証について質問する報道陣に対し、「裁判で明らかにする」とだけ述べた。
 ハンバラン競技場事業はボゴール県スントゥールで陸上競技場や屋内競技場など複合型の運動施設を新設する公共事業。2010年にアディ・カルヤ社などが建設を受注したが、昨年5月、建設途中の屋内競技場などの一部が地盤沈下で損壊し、建設を一時中断した。KPKは同事件でアンディ・マラランゲン青年スポーツ担当国務相を容疑者に断定。ナザルディン被告はアナス容疑者が受け取った資金を10年の民主党党首選に流用したと暴露していた。
 11年から出始めたアナス党首の関与疑惑が党勢を削ぐとの理由で、党首解任を求める声が党内で広がった。今月初めの世論調査で、党の支持率が09年総選挙の得票率の半分以下となる8%台となり、解任要求が一層強まり、民主党は今月、幹部級会合、全国代表者会議を相次いで開催。ユドヨノ大統領が自ら党を率いていく姿勢を示し、留任させることを決めていた。(吉田拓史)

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