被災1週間を振り返る プルイットの西尾さん ジャカルタの大洪水

 約25万人の被災者を出したジャカルタの大洪水は、市民に大きな不安を与えた。2002年、07年の洪水では、南ジャカルタの在留邦人が多く住む地域でも大きな被害があったが、今回は洪水が頻発する東ジャカルタ・カンプン・ムラユのほか、北ジャカルタの被害が目立った。依然として避難生活を続ける住民がいる中、海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」の北ジャカルタ・プルイットに住む会社員、西尾敏和さん(62)が被災・避難した約1週間を振り返った。
  ジャカルタは17日、14日から続いた雨で中央ジャカルタのオフィス街をはじめ各所が浸水、交通や電気が止まった。西尾さんが暮らすジャワ海から約1キロ弱のアパート前は冠水、水位は約20センチになった。会社に状況を説明すると、自宅での仕事を命じられた。夜、部屋の電気は止まり懐中電灯を持ち出した西尾さんは「子どものころにあった台風の夜みたい」と感じていたという。
 入居する19階から見える町は水浸し。大衆食堂や食料品店もシャッターを下ろし、動かなくなったATMも。ラジオから流れてくるのは道路の冠水や水位に関する報道ばかり。日本メディアが洪水による死者を伝え、安否を尋ねる日本の友人が相次いだ。アパートの緊急連絡網がなく、政府の公式発表もない。西尾さんは「外国人として心細かった」と話す。
 その後も雨は続き、19日午前0時45分にアパートの自家発電機が水没した。電気が止まったことで貯水ポンプも停止、水道水も出なくなった。約10リットルの水、コメ約5合の蓄えがあるものの「電気・水がなく、とても生活できる状況ではない」と思ったという。
 同日昼、西尾さんは迎えに来た会社関係者と木船で退避、在留邦人の友人が暮らすアパートの空き室を手配してもらった。避難時に持ってきたのは携帯電話のほか、情報を収集できるタブレット型端末、4日分の着替え。「友人に迷惑をかけている」と感じていた西尾さんは1週間後の25日夕、やっと帰宅できた。
 2006年に来イした西尾さんは07年の大洪水も経験した。5年に1回といわれるジャカルタの大洪水。「07年から5年目だった昨年に大洪水がなかったから、と行政や市民は高をくくっていたのでは。きちんと対策してきたのか」と疑問符を投げかけた 。(上松亮介)

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