プラボウォ氏 台風の目 14年大統領選展望 世論、強い指導者を待望 白石隆氏

 インドネシア政治研究の第一人者として知られる政策研究大学院大学の白石隆学長が1日、2014年の総選挙・大統領選について南ジャカルタで講演し、元陸軍戦略予備軍司令官のプラボウォ・スビアント・グリンドラ党最高顧問会議議長(61)が「大統領選の台風の目になる」と予想した。首都圏を上回る速度で成長が見込まれる地方都市の政治・経済的重要性を指摘しながら、今後は自治体の首長経験者が大統領選でも大きな役割を果たすようになるとも説いた。講演はりそなプルダニア銀行が創業55周年を記念して開いた。
 白石氏は1998年のスハルト政権崩壊後の政治制度を「誰が大統領になってもスハルトのようにはならない、意図的に弱い大統領を作る制度」と指摘。さらに、政党の自由化による政党乱立で連立政権が常態化した結果、政策決定が縛られ、大統領の権限がさらに弱くなったと説明し、「ユドヨノ大統領は『石橋をたたいても渡らない』という声があるが、政党政治と大統領制度の問題だ」と分析した。 
 大統領の権力の弱さは構造的問題とはいえ、都市問題や貧富の差の解消が進まないことなど、有権者の間では現政権への不満があるのも事実。その中で対照的に支持を伸ばしているのがプラボウォ氏という。
 同氏は、陸軍特殊部隊(コパスス)司令官などを務め、5月暴動の引き金になったトリサクティ大生射殺事件や活動家誘拐事件の首謀者とされる反面、依然として国軍内に大きな影響力を持つ指導者というイメージが定着している。白石氏は、政権への不満を背景とした「強い指導者待望論」を支持急伸の理由に挙げた。
 一方で白石氏は、プラボウォ氏を強権的政治手法で知られるベネズエラのチャベス大統領に例え、「大統領にすると何をするか分からない。インドネシアのチャベスになる可能性もある」と言及。「どうやってプラボウォ氏を外すかが政治の世界のアジェンダ(政治課題)になっている」と説明した。
 「プラボウォ外し」の具体的な駆け引きとして、大統領出馬条件となる議席獲得・得票率の規定に着目。前回09年の選挙では、国会議席の20%、総有効票の25%以上を得た政党・政党連合の支持が必要だった。次期選挙については現在、大統領選挙法案の改正を行っているが、早い段階でこの比率を上げることが決まった場合は、同氏が憲法裁に無効を求める提訴を行うなどの抵抗が見込まれるという。反プラボウォ陣営は選挙直前まで規定の決定を遅らせた上、比率も高めに設定することを目指すと予測した。
◇首長の手腕に注目
また、スハルト政権崩壊後の大きな特徴として、国の歳出のうち約3割は自由度の高い交付金を中心とした地方向けの支出であることなど、地方分権の進展を挙げた。
 2030年時点でスラバヤやバンドン、メダンなどの地方都市は首都圏を上回る速度で成長するとした米コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」の予想を紹介しながら、「地方の力が強い時は、首長の手腕が地方の経済成長に相当効いてくる」と指摘。インドネシアについて考える上で「中央政治だけ見ていればよかった時代は終わった」と強調した。
 2000年代前半は、地方の首長では行政組織を運営できる能力を持つ人材は軍にしかいなかったが、近年台頭する国軍出身者ではない若い世代を「相当、マネジメント能力がある」と評価。中部ジャワ州ソロ市長時代に頭角を現し、ジャカルタ特別州知事となったジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)氏らを筆頭に、地方首長は大統領選にも影響を及ぼすとの見方を示し、「州知事や大都市の市長で業績を挙げた人に注意しておく必要がある」と展望した。(道下健弘、写真も)
◇プラボウォ・スビアント
 1951年10月、ジャカルタ生まれ。スハルト政権を支えた経済学者スミトロ・ジョヨハディクスモ氏の長男。スハルト元大統領の娘婿(後に離婚)として国軍でキャリアを重ね、陸軍特殊部隊(コパスス)や陸軍戦略予備軍(コストラッド)司令官を歴任。98年の同政権崩壊後に軍籍をはく奪され、海外に亡命していたが帰国後に政治活動を活発化。現在、グリンドラ党最高顧問会議議長を務める。2009年大統領選では、大統領に立候補した闘争民主党のメガワティ党首の副大統領候補として、2位につけた。シンクタンクの国際戦略研究所(CSIS)が昨年実施した調査では、同氏の次期大統領選での支持率は17.9%で1位だった。

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