シャリア観光に本腰 2000億ドル市場取り込みへ 観光省が環境整備

 観光創造経済省は今年、ムスリムの観光客誘致に本腰を入れる。ハラル(イスラムの教義に沿った)食品の提供などイスラムの戒律に沿った「シャリア(イスラム法)観光」と呼ばれる市場は2020年に世界全体で2千億ドル(約18兆円)近くまで成長すると予測され、日本でも徐々に誘致の動きが見え始めている。インドネシア政府は、世界最大のムスリム人口を有するという利点を生かし、中東を中心としたムスリム観光客の取り込みを目指す。旅行代理店やホテル、飲食店などと提携してムスリムが安心して旅行できる環境の整備を進める方針だ。

 中央統計局によると、エジプトとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、サウジアラビアからの観光客数は、2011年1〜11月に、前年同期比13.11%増を記録。その中でも特に伸び率が高いエジプトは同30.5%増だった。エジプトの観光客数は昨年11カ月で4253人と、同期間で100万人を超えるマレーシアやシンガポールと比べてまだ少ないが、同省によると、中東四カ国の旅行者は、滞在日数が10日から14日と、3〜7日のアジア地域より滞在期間が長い傾向がある。西ジャワ州ボゴールやスマトラ島の国立公園など、自然を楽しめる場所が人気だという。
 MICE(研修、視察、国際会議、国際展示会)局海外連携部のタウフィック・ヌルヒダヤット部長は「世界一のムスリム人口を抱えるインドネシアは、シャリアに沿った食事やサービスを提供できる環境が整っているが、万全ではない。ハラルだが認証を取得していない飲食店もあり、外国人のムスリムに不安を与える」と指摘する。ハラル食品を扱う飲食店に、ハラル認証マーク掲示の徹底を促し、宿泊施設では客室にメッカの方角を示す印「キブラ」の表示や、礼拝に使う敷物「サジャダ」、聖典コーランの提供など、ムスリム向けサービスを充実させるよう指導する意向。旅行業者に礼拝時間や出発前に旅の安全を祈る時間を設けたツアーの企画、スパなどにもシャリアに沿ったサービスの指導を進めるとしている。
 同部長は「隣国マレーシアは2〜3年前からシャリア観光事業に力を入れており、中東で人気の観光目的地になっている。インドネシアも遅れをとらないよう、国内の観光資源を全世界のムスリムにアピールしていきたい」と語った。
■日本もムスリム市場狙う
 日本でも、シャリア観光に向けた取り組みが始まっている。ミヤコ国際ツーリスト(大阪)は11年に、アジアのムスリムをターゲットに、ハラル食品を提供する「ハラルツアー」の取り扱いを開始した。日本ハラール協会(大阪)の指導を受けた食事を提供するツアーで、マレーシア人ムスリムのスタッフが企画した。現在はマレーシアの旅行代理店経由のほか、同社のウェブサイトを見て申し込むという個人旅行者も多い。同社グローバル営業部の松下隆子部長は、訪日旅行客が増えているインドネシアでは、現地の旅行代理店などと提携し、ハラルツアーの周知をしていくという。
 昨年12月には、東南アジア諸国連合(ASEAN)貿易投資観光促進センター(日本アセアンセンター)がムスリム観光客の受け入れに関するセミナーを実施。100人以上が参加した。観光交流部の渕上奘慶部長代理によると、3月までにムスリム観光客の受け入れ方法に関するウェブサイトを立ち上げ、計3回セミナーを開くという。(堀田実希)

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