年末年始、全国各地の様子は‥

■焼き魚屋台に人だかり 東ヌサトゥンガラ州クパン
 東ヌサトゥンガラ州州都クパン市の浜辺近くには、焼き魚を売るカキリマ(屋台)数十軒が毎夜立つ。大みそかには普段以上の人だかりができ、一つ3〜5万ルピアの焼き魚を分け合う家族連れや若者たちでにぎわった。
 カキリマでは、その日取ったばかりの魚が氷の上に並べられ、客が選んだ魚を注文に応じ、焼くか、揚げるかする。屋台の蛍光灯が通りに並ぶ様子は、インドネシアならではの素朴な夜景だ。
 両親と2人の妹と焼き魚屋台を営業するフダ・ハッサンさん(24)は、大みそかも仕事に大忙し。それでも暇を見つけては連射式花火を打ち上げていた。「私はムスリム。ムスリムの新年はレバラン(断食明け大祭)だけど、人がたくさん来て楽しむのはめでたいことだ」と話した。
 地域の多数派はカトリック。モヒカン刈りの威勢の良さそうな若者たちが、キリストの絵をあしらった改造ベモ(乗り合い小型バス)にスピーカーを積み、欧米のディスコ音楽を大音量で流すなど、街はお祭り気分。教会は色鮮やかな照明に彩られた。
 午後7時ごろから街のあらゆるところで花火が上がると、日付が変わるまで、市内のどこかから花火が上がり続けた。年明け後は荷台に子どもを満載したトラックや3、4人乗りのオートバイ、発煙筒をたく若者らが市内をパレードした。(吉田拓史)

■禁止のはずの花火が‥ バリ島、子どもの歓声が響く
 やけどや失明などの事故が後を絶たないとして、バリ島では今年、デンパサールの慣習村の組織が花火を禁止するとの通知を出した。罰則規定はないが、それまでスーパーマーケットに山のように積まれていた花火が姿を消し、道端に並べられた花火もトランペットだけに取って代わった。ところが大みそかの晩は、どこで手に入れたのか、花火で遊ぶ子どもたちの歓声が聞かれた。
 男の子が筒状の打ち上げ花火を握り、火を付けると、1、2回目は大きな音を立てて花火が炸裂。ところが3回目は手元で爆発してしまい、男の子はすぐに花火を路上に投げ捨て、猛烈な勢いで走り去った。花火は路上でパン、パンと大きな音を立てながら火花を散らした。幸い、男の子は無事だったが、花火の危険を目の当たりにした一瞬だった。こんなことがあちこちで起こったのかもしれない。
 一方、クタなどの観光地ではホテルやレストランが開いた大みそかパーティーに大勢の人が出向き、盛大なカウントダウンを行った。屋外パーティーを企画したラマヤナ・ホテルの関係者は「雨が心配だったが、この時になって降らなかった。何事もなく平和に終わってなにより」と機材の後片付けをしながら話した。 (北井香織)

■成長で自信付ける市民 格差を感じ不満の声も
 10月に就任したばかりのジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)州知事の提案で、今年初めて歩行者天国となった大みそかのジャカルタ中心部。午後6時、モナス(独立記念塔)のあるムルデカ広場では、小雨の中、青、赤、黄色などの銀紙で飾り付けられた紙ラッパをビニールシートの上に並べた行商人たちが商売に精を出し、年越しのカウントダウンを待ちきれない多くの子どもたちは「ブーブー」と紙ラッパの音を響かせて雰囲気を盛り上げていた。
 午後8時ごろ、タムリン通りは雨のせいか、まだまだ人出はそれほど多くない。通行止めとなった通りを市民が歩いているが、道を歩くのにはまったく問題ないほどの人混みだ。
 木の下で雨宿りをする人々も多い。さらに雨足が強まると、傘を持たない人たちは、近くのプラザ・インドネシアやセブンイレブンなどの軒下に身をひそめた。午後11時、雨足が弱まってくると、ホテル・インドネシア・ケンピンスキ前のロータリーを目指し、市民が押し掛けた。
 ロータリーでは、ホテル・マンダリン前に舞台が設けられ、アイドル・グループの曲が聞こえてきた。よく見てみると、女性警官たちが制服姿のまま壇上で歌いながら踊っていた。
 午後11時半ごろ、ロータリーは足の踏み場もないほどの人々でごった返していた。年越しを待ちきれないのか、花火がバンバンと打ち上げられる。手に持って空に掲げた花火が手元で破裂し、逃げまどう光景も見られた。
 雨の中、数えきれないほどの花火、紙ラッパが鳴り響き、大衆のざわめきが入り混じっていた。熱気に満ちた様子はまさにインドネシアの市民が、急速な経済成長を経て、自信を付けたことを物語っているかのようだった。
 一方、ムルデカ広場で飲料販売をしていたところ、警察から移動を命じられ、ロータリーまで移動してきたという行商人のアビアさん(40)は「金持ちの生活はますます良くなっていくが、私の生活は良くなっていない」と述べるなど、急速な経済成長を実感できず、格差が依然として深刻な問題になっていることをうかがわせた。(東京海洋大学4年生・秋間淳=インターン)

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly