飲酒したら「禁錮2年」 禁酒法案に波紋 バリの業者「奇怪な悪法」 開発統一党が提出 「イスラムと無関係」

 「飲酒したら禁錮2年」―。イスラム政党・開発統一党(PPP)が提出したアルコールの製造と販売、飲酒を禁止する法案が、にわかに波紋を広げている。同党出身のスルヤダルマ・アリ宗教相は飲酒による弊害を指摘し、法案に賛同する意向を表明。一方、ヒンドゥー教徒が大部分を占める国際的観光地のバリ島では、宿泊業者や飲食業界から「奇怪な悪法」との批判の声が噴出している。同党は「(飲酒を禁止している)イスラムと法案は無関係」と主張しているが、多様な宗教を認めるインドネシアでの「禁酒法」騒動は、今後も尾を引きそうだ。

 同法案は、インドネシア全土でアルコール飲料の製造や販売、飲酒を禁止するというもの。製造した場合には罰金を含む最大禁錮10年、販売した場合には同禁錮5年、飲酒した場合には同禁錮2年を科す。
 同法案は、今月13日の国会本会議で決めた来年優先的に審議する70法案に含まれている。
 同党は、インドネシアで今年に入り、飲酒や麻薬使用時の運転による死傷事故が相次いでいると指摘している。ジャカルタでは1月、当時29歳の女性が運転する車両が通行人ら12人をはね、9人が死亡する事故が発生。南スラウェシ州マカッサルでは、14歳の少年が父親の車で飲酒運転し、15人にけがを負わせる事故があった。
 同党のアルワニ・トマフィ議員は「シャリア(イスラム法)の基づいて提出していると誤解しないでほしい」と強調し、アルコール類が与える国家への損害を指摘した。
 法案を提案したアフマド・クルディ・ムクリ同党議員は、地元メディアの取材に対し、「国家のモラルを守るため」と話している。
 開発統一党の国会(全560議席)での議席数は39(全体の約7%)で、法案が成立する可能性は低いとみられるが、国民信託党(PAN)が賛意を表明するなど、今後支持が広がる可能性もある。
 ホテル・レストラン協会バリ支部のペリー・マルクス事務局長は、アルコール類を販売する飲食店やクラブが、多くの外国人観光客でにぎわっているバリ島で、アルコール飲料の提供ができなくなった場合、同島の主要産業の観光に大きな打撃を与え、インドネシア全体のイメージにも影響が出ると危惧した。
 豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙のウェブ版は20日、バリの観光業が縮小につながると指摘する記事を掲載。国内販売1位の「ビンタン・ビール」を製造・販売するムルティ・ビンタン社は「非常にセンシティブな問題」としている。

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