【火焔樹】 日本で見たインドネシア
出張で日本に行った。到着したその日、東京国際映画祭の会場である六本木に向かった。
その日は、インドネシア作品の上映が3本。昼の上映では、映画祭に招待されたインドネシアの3監督やプロデューサー、女優が一堂に会した。200人以上が集まった日本の観客から大きな拍手を浴び、記念写真やサインをせがまれる姿も目立った。
数日後、日本で一般公開されているインドネシアのアクション映画「ザ・レイド」を有楽町で鑑賞した。平日の昼とあって、人の入りはそれほどでもなかったが、観た人の感想をウェブで探してみると、好意的な反応が大半だ。今月初めにはアイドルグループJKT48の2期生の最終審査が東京であった。審査の様子はインターネットで生中継され、日イ両国で多くのファンの注目を浴びた。
先月末に行われた世界各国の警察音楽隊による世界のお巡りさんコンサートでは、インドネシアから初参加。中部ジャワ州スマランにある警察士官学校の警察官の卵たちが、日本の警視庁や皇宮警察、宮城、福島といった震災被災地の警察音楽隊のほか、ニューヨークやソウル、ベトナムに混じって登場した。
演奏を専門にしているセミプロの隊も多い中、けして演奏は上手とは言えなかったが、堂々としたステージ度胸や観客を喜ばせるサービス精神はインドネシア人の得意とするところ。銀座のパレードでは、スティックマスターのパフォーマンスが沿道に集まった市民の度肝を抜く姿を見て、目頭が熱くなった。
活況な経済を背景に日本でも関心が高まっているインドネシア。特に文化面では、まだまだ物珍しさからの興味といった点は否めない。しかし、ジャカルタの日本食のように、インドネシアの文化を日本で目にするのが当たり前になる日が来れば、日本とインドネシアの関係はさらに深まったという証になるのだろう。
そんな時が来ることを想像しながら、そのために自分ができることは何かを考える日々だ。(上野太郎)