邦人社会で相次ぐ投資詐欺被害 被害額200万円単位で泣き寝入り狙う

 ジャカルタ邦人社会で投資詐欺の被害が相次いでいる。再生可能エネルギー関連で200万円単位の投資を持ちかけ、支払った途端に連絡がつかなくなる手口。知人の紹介であることが多く、人間関係を支える信用を利用する点でも悪質だ。弊紙に被害者から寄せられた報告によると、同一人物による複数人の被害総額は2000万円程度に上るとみられる。ただ、海外での日本人間での詐欺被害は日本の警察の捜査権が及ばず、泣き寝入りを余儀なくされるケースが多い。被害証言を元に具体的な事例を提示し、再発防止につなげる。なお、被害者のプライバシー保護のため、細部は変更したが、基本的な事実関係は変更していない。

■政財界との人脈を誇示
 「財閥筋がバックにいるなら安心だ」。ジャカルタの駐在員A氏は昨年、知人から紹介されたB氏にビジネスマッチングの相手先のリスト作成を依頼した。このB氏は再生可能エネルギー関係の事業を営んでおり、インドネシアとの関わりが長いと話し、政財界との人脈をアピールしていた。A氏はB氏を信じてリスト作成を200万円で依頼し、さらに知人がすでに投資していたB氏の再生可能エネルギー事業への一口100万円の投資も個人的に行った。
 「信頼できる知人からの紹介で信用し切ってしまった」―。A氏はB氏が作成したリストを見て早速後悔することになる。B氏から送られてきたPDFには、シナルマス、アダロ、ジャルムなどインドネシアを代表する財閥、大企業の幹部の名前、役職、携帯電話番号、個人メールがずらりと並んでいたが、読み込むほどに疑問が噴出する。

■成果物は学生レベル
 このリスト、企業名のつづり間違いや電話番号の桁の不一致、複数ページにわたる同一人物の重複など「学生がネットで適当に画像検索して作成したレベル」(A氏)だった。数名に直接電話してみると「そのような案件は知らない」と一蹴されるか、そもそも存在しない番号だった。写真の一部には財閥幹部との「ツーショット写真」も掲載されていたが、「著名人のセミナーにB氏が参加して頼んで撮影してもらったもの」(A氏)だった。
 激怒したA氏が返金を求めても、B氏は「リストは納品済み」と言い張る。交渉の末、支払い額を半額の100万円に減らす妥協案で合意するも、A氏の損失感は拭えなかった。
 追い打ちをかけたのは、知人の勧めに乗った再生可能エネルギー投資だ。B氏と連絡が取れなくなり、ワッツアップに登録されていた番号を見ると、国番号が日本。調べてみると、B氏はインドネシアでの就労許可を取得しておらず、登記簿にも会社の形跡がない。A氏の手元には、不備だらけのPDFと振込控えが残るばかりだった。

■会社「100万円は勉強料」
 A氏は会社の上司に相談したが「リストがある以上、完全な詐欺とは言えず、訴訟費用の方が高くつく」と返され、100万円は「勉強料」として社内処理された。ただ、A氏個人の投資はもちろん泣き寝入りだ。B氏を紹介した知人によると自身も被害に遭ったといい、「被害者は複数人おり、被害総額は2000万円は下らない」という。
 インドネシア駐在歴の長いある日系企業幹部は「このような話は実際には非常に多い。在留邦人社会の中には『同じ日本人だから助けてあげよう』と考える善良な人が皮肉なことに詐欺師に知人を紹介してしまうことがある」と話す。その上で「仮に数千万円の被害であれば会社も黙ってないだろうが、100万円程度なら事を荒立てない。ここを詐欺師はうまく利用している」と分析する。では、詐欺被害に遭わないためにはどうすれば良いのか。(じゃかるた新聞編集長 赤井俊文)

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