日イ政府、ＭＰＡ計画を承認　事業総額３．４兆円　東京で運営委員会　インフラ整備加速目指す

　日本とインドネシアの官民がジャカルタと周辺地域のインフラ整備や投資環境改善に関する計画作りを進めてきた首都圏投資促進特別地域（ＭＰＡ）の第３回運営委員会が９日、東京で開かれ、両国は２０２０年までの事業試算総額約４１０兆ルピア（約３兆４千億円）のＭＰＡマスタープランを承認した。日本政府は需要が旺盛な新興国に対し、計画段階から建設、運営・管理を一括して輸出する「パッケージ型インフラ輸出」を成長戦略の柱として掲げており、計画に携わった強みを生かしてＭＰＡの各事業を日本企業が受注することで、パッケージ型インフラ輸出の先例にしたい考え。全国の開発計画を経済成長促進・拡大マスタープラン（ＭＰ３ＥＩ）として包括的にまとめるなど、インドネシアでは、経済成長の持続に向けてインフラの整備が急務との認識が強く、ＭＰＡを一つの呼び水に開発を加速させる方針だ。
（関口潤）

　枝野幸男経済産業相が出席してジャカルタで開かれた昨年９月以来となる今回の運営委員会は、玄葉光一郎外相とハッタ・ラジャサ経済担当調整相が共同議長を務め、日本側からは枝野経産相、長安豊国土交通副大臣、鹿取克章駐インドネシア日本大使、ＪＪＣの本岡卓爾副理事長、インドネシア側からはヒダヤット工業相、マリ・パンゲストゥ観光創造経済相、ムハンマド・ルトゥフィ駐日インドネシア大使、インドネシア商工会議所（カディン）インドネシア日本経済委員会（ＩＪＥＣ）のソニー・ハルソノ委員長らが出席した。
　運営委員会で承認したマスタープランでは、２０２０年までの完工を目指す「優先事業」が４５件、２０１３年末までの着工を目指す「早期実施事業」が１８件と明記。早期実施事業となっているジャカルタ都市高速鉄道（ＭＲＴ＝大量高速交通システム）建設、西ジャワ州カラワン県のチラマヤ新国際港建設など５件を「両国の官民が連携して取り組むＭＰＡの事業の象徴的事業」であると位置付けた。
　事業試算総額約４１０兆ルピアのうち、約１２５兆ルピア（約１兆円）が日本の政府開発援助（ＯＤＡ）を含む外国政府の援助による資金協力が期待されると試算。委員会で日本側は「個別の事業に関するインドネシア政府からの要請に応じて積極的に協力を検討する」と表明した。日本政府が資金協力する案件を、日本企業の受注につなげたい考えだ。
　日本政府はすでに、ＭＲＴ南北線事業やジャワ・スマトラ連系送電線事業、インドラマユ石炭火力発電事業、プルイット排水機場改修事業に約千億円のＯＤＡによる資金協力を実施している。
　両国は、ＭＰＡは「両国の互恵関係の象徴であり、官民が連携して成功させることが重要」との認識で一致。今後、運営委員会と技術委員会を継続して開くとともに、各関係者の意思疎通と優先事業の実施の加速を目指し、「ＭＰＡ実施チーム」を新たに設置することを決めた。ＭＰＡに盛り込まれ、投資関連の法制度を整備して投資促進を目指す「投資促進ハイレベル協議」も継続して実施する。
　ＭＰＡは１０年１月に直嶋正行経済産業相（当時）がジャカルタを訪問した際、ジャカルタ・ジャパンクラブ（ＪＪＣ）から挙がった提言などをきっかけに、両国が協議を続け、同年１２月にバリを訪問した前原誠司外相（当時）とハッタ調整相が構想を進めることで合意。国際協力機構（ＪＩＣＡ）の資金協力の枠組みの下、１１社の日本の企業連合が昨年５月から、マスタープランの策定へ向けた調査を実施してきた。
　運営委員会に先立ち同日、第２回日インドネシア閣僚級経済協議が開かれ、インフラ整備のほか、看護師・介護福祉士受け入れ事業を中心とした経済連携協定（ＥＰＡ）、２国間クレジットなど気候変動分野、クリエイティブ産業などでの協力強化へ向けて協議した。

■ハッタ調整相ら、野田首相を表敬
　ハッタ・ラジャサ経済担当調整相ら訪日中の閣僚は９日、野田佳彦首相を表敬訪問した。
　野田氏は、今回のハッタ氏らの訪日によって「戦略的パートナーシップが経済面でも一層強化されることを期待する」と強調。「両国の貿易・投資関係は好調であり、インフラ整備にかかわる協力などを通じて、互恵関係をさらに拡大させていきたい」と語った。
　ハッタ氏は「両国は戦略的パートナーであるのみならず、古くからの友人である」と述べ、経済連携協定（ＥＰＡ）などを通じて関係強化に全力を尽くしたいと伝えた。
　両氏は、南シナ海問題など地域情勢についても意見交換。今年１１月の東アジア首脳会議（ＥＡＳ）や、インドネシアが議長国を務める来年のアジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）などで緊密に連携していくことで一致した。
　ハッタ氏らは同日、日本インドネシア協会会長の福田康夫元首相とも会談した。