【火焔樹】 少しずつ広がる人の輪
ジャカルタお掃除クラブに参加した時のこと。トングとスーパーのレジ袋を持って、ごみ拾いを始めた。すると、ジルバブを被って、イヤホンを付けた20代の女性が話しかけてきた。
「何をしているのか」という。「日本人が、きれいなジャカルタを目指してそうじを始めたんだ」というと、「実は‥」と自分の体験談を話し始めた。
私もごみを捨てないとか、拾うとか、とても大切だと思っていた。あるとき自分がそういう行動に出たら、一緒にいた友達に、なんでそんなことをするのか、と言われたという。そこで彼女は自分の意見を言うことも、まして反論することも、できなかった。そんな自分が悲しかった。私もぜひ一緒にこの活動に参加したいといってきたのだ。
代表の芦田さんを紹介したり、次回の連絡のための電話番号を交換して、その日は別れた。
一週間経って、私は、あまり期待をせずに「今日の清掃場所は、コンベンションセンター前だよ」とメールを送ったら、今そちらに向かっているという。なんとさらに、彼女に賛同する友人がもう一人、すでに集合場所に来ていた。
初めてのインドネシア人仲間が加わった。デシーさんとサラさんだ。次の週も、掃除する場所を教えてほしいとまた、メールが来た。その後も、毎回の活動に欠かさず参加してくれている。
お掃除クラブの活動は、こんなちょっと背中を押すだけのことだ。小さくても、細くても、長く、広く、人の輪が少しずつ広がっていけばいいと思う。(主婦・小野里典子)