大統領選をどうみるか バクティアル・アラム氏 インドネシア大准教授
アジアコンサルト・アソシエーツ(AA)と松井グローカル(MG)は20日、「展望2024年大統領選〜7月までの各勢力の動きと今後の見通し〜」をテーマにオンライン講演会を実施した。この中でAA代表でインドネシア大学人文学部准教授のバクティアル・アラム氏の講演要旨は次の通り。
来年2月に行われる大統領選に向けて、3人の主要候補の支持率争いが続いている。プラボウォ・スビアント国防相、ガンジャル・プラノウォ中部ジャワ州知事、アニス・バスウェダン前ジャカルタ特別州知事の3人だ。
民間調査機関LSJが3日に発表した調査では、支持率はプラボウォ氏が40・3%に達し、ガンジャル氏32・6%、アニス氏20・7%の両氏に大きく差をつけた。一方、2日発表のポリゴウ研究所の調査ではプラボウォ氏32・96%、ガンジャル氏32・40%。事実上互角だった。
一方、全ての政党連合で副大統領候補は7月中旬現在、まだ未定となっている。
開発統一党(PPP)は4月末、ガンジャル氏を来年の大統領選で公認候補として擁立すると発表した。これにより、同党が組むインドネシア統一連合(KIB)は分裂するのではとの憶測も出たが、現在まで連合解消の発表はない。
各政党連合にとって当面のカギは、副大統領候補の選定となる。場合によっては、連合の分裂・再編成の可能性も否定できない。
副大統領候補の選定で不協和音が生じる可能性が指摘されているのは、変革連合だ。同連合の民主党のアグス・ユドヨノ党首はアニス氏の副大統領候補になることに意欲的だが、福祉正義党(PKS)も党員のアヘル前西ジャワ州知事を推しており、こうした状況が今後いかに収拾されるかが注目される。
副大統領候補として名前が挙がっているのは、サンディアガ・ウノ観光・創造経済相、エリック・トーヒル国営企業相、リドワン・カミル西ジャワ州知事などだ。
注目されるジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の意向だが、大統領およびその周辺の人々の動きから、ジョコウィ大統領がプラボウォ氏を支持する可能性が高いことがうかがわれた。
次政権がガンジャル政権になった場合、闘争民主党、なかんずくメガワティ党首の影響力が極めて大きくなり、ジョコウィ氏一族が今後さらなる政治的な影響力を得るためには、必ずしも理想的な環境といえない。
反対にプラボウォ政権になった場合、ジョコウィ氏はプラボウォ氏に最も近い政治家、いわば元老的な存在になる可能性が高い。ただ、今後、ジョコウィ氏がプラボウォ氏への支持を明確に打ち出していくなら、闘争民主党からの反発が出るのは避けられないだろう。
次期大統領選が近づくにつれ、ジョコウィ大統領と闘争民主党及びメガワティ氏との関係がいかに変貌するか。この点が、これからの政局の動向を見通すための大事なカギとなるだろう。
バクティアル・アラム
インドネシア大学人文学部准教授、アジアコンサルト・アソシエーツ代表。インドネシア大・米ハーバード大学院卒。16年、日イ相互理解への貢献で旭日小綬章を受章。