支持率2%の壁を破れ
インスタグラムなどSNSの世界ではここ数カ月、プアン・マハラニの話題があふれている。いや、決していい話ではない。第5代大統領の娘で、建国の父スカルノの孫娘でありながら、書き込みも写真も否定的なものばかり。実績に触れるものは皆無に等しく、嘲笑に次ぐ嘲笑で覆われている。
2024年に予定される次期大統領選に向けた各種世論調査を見ても、プアンの支持率はどれも2%に届かない。ただ、公平を期すために敢えて指摘すれば、この国で女性政治家であることは、過去の歴史が示す通り、容易ではない。
「タフで戦闘的」。そんなイメージで売ったスシ・プジアストゥティをみよう。海洋水産相として彼女の人気が急上昇したのは、「撃沈せよ!」の一言から。国内はもとより、彼女の名は世界に知れ渡った。
違法操業をする外国漁船を排除するため、爆破処理という強硬手段をとったのも間違いない。しかし、スシは以来、事あるごとにこの一言を口にする。なぜか。存在感を示さなければ、女性政治家は埋没するのだ。
もう一人例を挙げよう。プアンの母親であり、最大与党の闘争民主党(PDIP)の党首、メガワティ・スカルノプトリ元大統領だ。遍歴を振り返れば、困難な政治問題にも真っ向から勝負を挑む剛腕で知られる。権威主義に染まるスハルト政権下でも、彼女は常に恐れられる存在だった。しかし、今は党内でこそ影響力を保ちながらも、一歩外に出れば人気低迷は否定できない。
では、プアンはどうか。彼女もまた「豪腕な女性政治家」と認識されてきた。2019年の議会選挙で、中部ジャワ州の激戦区で約40万票を獲得。トップ当選した。人材開発・文化調整相を経て国会議長になると、43法案の法制化に実績を残した。
雇用創出法、改正汚職撲滅法、パプア州再編法案……。賛否はさておき、政権にとっての重要法案を可決に導いたのはプアンだ。にもかかわらず、なぜ彼女は大統領選に向けて上昇気流に乗れないのか。なぜ、国民の嘲笑を浴びるのか。
不人気の原因を考えれば、まず広報戦術の失敗がある。なぜ、いまさら田植えをする姿や、建設工事に加わるプアンをアピールするのか。大衆に寄り添う姿勢はいいとして、そこに国の将来を預ける大統領のイメージはない。
その結果、国民の反応と言えば、前述の通り、「わざとらしい」「噴飯もの」という体たらく。国防相のプラボウォ、前ジャカルタ特別州知事のアニス、そして中部ジャワ州知事のガンジャルという強力なライバルに立ち向かう政治家とは評価されていない。
ならば、女性政治家に厳しいこの国で、最高指導者になるにはどうすべきか。「銀のスプーンをくわえて生まれてきた」。そんな名門出身のイメージは払拭せよ。SNSの活用法も知らない政策チームは解体せよ。党外に支持基盤を作り、政治課題には真っ向から挑戦せよ。
支持率2%の壁を突き破るには、新しい政策チームと出直す。ここから始まるだろう。(リリス・イラワティ)