情報機関法案成立へ テロ対策で諜報権限明確化 「旧時代回帰」と反発も

 政府と国会は二十九日、諜報機関の国家情報庁(BIN)の役割や権限の強化を盛り込んだ情報機関法案の条項について合意した。国会は十月末までに本会議で採決し、法案成立を目指す。二〇〇四年から審議が続けられてきた同法案に対しては、日常的な国民の活動監視を行うことで、事実上の恐怖政治を敷いたスハルト独裁政権時代の記憶を想起させることから反発が強く、審議が先延ばしされてきたが、二十五日に中部ジャワ州ソロ(スラカルタ)で自爆テロが発生したことを受け、法制定の気運が高まった。

 BINに傍受の権限を与えるかが焦点となっていたが、法案ではテロや分離独立志向など国家の安全や統治を脅かし得る充分な証拠があった場合に、地裁の承認を得れば傍受を認めるとした。
 資金の流れに関する調査も充分な証拠がある場合にのみ認め、金融取引・報告分析センター(PPATK)や中銀は必要な情報を提供する義務を持つ。情報収集のために警察と協力することも明記し、逮捕・拘束権は認めない。
 国会第一委員会(外交・国防・情報)のマフッド・シディック委員長(福祉正義党)は「国民の警戒心を優先的に考慮したことで審議に時間がかかっている」と説明。同委のトゥバグス・ハサヌディン副委員長(闘争民主党)は「BINやそのほかの諜報にかかわる組織が、恣意的に逮捕権を行使するなど人権を侵害することはできない」と強調した。
 BINのスタント長官は「この法案はBINをプロフェッショナルな組織にするためのもの。過去のような人権侵害を起こすことはなく、国民が反発しないことを望んでいる」と語った。
 テロ対策をめぐっては、二〇〇〇年に国軍から分離した国家警察が単体で取り締まるには限界があるとの理由から、政府は警察と国軍、諜報機関の連携を強化する方針を示している。
 英字紙ジャカルタグローブはテロの脅威に対処するために「情報機関法は早急に制定されるべき」と主張。一方で「われわれは人々が、法に照らし合わせることなく逮捕され、ときに拷問された古い時代に戻りたくない。インドネシア国民は自ら勝ち取った民主主義と個人の自由に誇りを持っている」とつづり、法案の規定には慎重を期すよう求めた。

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