バリで震災伝えたい 津波被害の着物 縫い合わせ 立川市のしおみさん
東日本大震災の津波で泥だらけになった着物を洋服に仕立て直すことで、震災を未来に伝え続けたいと活動している東京都立川市のしおみえりこさん(60)が先月30日、バリ島マス村のレストラン「カユン」でバリ人らを集め「ちくちく着物ワークショップ」を開いた。会場ではバイオリンやバリの伝統弦楽器ルバブの演奏もあった。
しおみさんは演奏会などの企画を手掛ける市民グループ「カーニバルカンパニー」のプロデューサー。被災地の子どもたちに楽器を贈る活動をしていた昨年9月、宮城県石巻市の呉服店から泥まみれの着物を譲り受けた。これらを何度も洗って洋服に作り変え、震災の記憶を聴衆に伝えるために演奏会の奏者の衣装にした。そしてあまった布地をつなぎ合わせ、作品として残す活動を始めた。
今回は旧友の住むバリ島に着物の端切れを持ち込み地元の人たちや在住邦人らと一緒に縫い合わせる作業をした。
「着物は重曹を使って何度も洗い流しました。ところどころほつれたり、油染みの残る布地は震災の記憶を未来へ伝えるためのものです。今回はバリ島の人にも震災のことを伝えたいと、布地を持ってきました」としおみさんは話した。
会場にはバリの伝統衣装にも使われるクバヤの布地の端切れも多数用意された。参加者は思い思いの発想で端切れを縫い合わせ1枚50センチ四方の「作品」に仕上げた。木彫品のギャラリーを経営するイダ・アユさんは「どの端切れも素晴らしい着物だったことがうかがえる。震災の犠牲になったことは悲しいが、こんな風に作り変えてもう一度価値あるものにするアイデアは素晴らしい」と話した。
これまでに出来上がった端切れ布は、被災地の子どもたちによる演奏会の会場に飾られた。バリ島で作ったものも近く立川市で開催する演奏会で掲げる予定だ。しおみさんは千枚を目標にこれからも全国各地で作業を続けるつもりだ。(バリ州マス村で、北井香織、写真も)