民主化の良き前例に スハルト政権崩壊14年 改革の歩みに不満も

 スハルト大統領(二〇〇八年一月に死去)が一九九八年に辞任を発表し、三十二年間にわたる長期政権が崩壊してから、二十一日で十四年が経過した。中東・北アフリカ諸国で体制変換を推し進めた「アラブの春」を機に、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアは、民主化を円滑に進めた良き前例として改めて注目が集まった。海外からの投資の増加を追い風に経済面でも好調が続く。一方、改革の取り組みはまだ不十分との指摘も上がっている。

 スハルト政権を引き継いだハビビ政権下の九九年、四十四年ぶりに民主的手続きによる国会議員選挙を実施。初の直接投票となった〇四年の大統領選は民主化プロセスの中間決算と位置付けられ、ユドヨノ政権が誕生した。二〇〇一年には地方分権化も実施され、州・県知事、市長の直接選挙も〇五年に始まるなど、民主化は地方レベルにも浸透している。
 英字紙ジャカルタポストは二十一日付の社説で十四年間を振り返り、着実に歩みを進める民主化のプロセスを「一歩後退二歩前進」と一定の評価を与えた。
 ただ、「汚職、癒着、縁故主義(KKN)」がまん延した旧体制からの脱却を掲げ、現体制移行の原動力となった、「レフォルマシ」(改革)を叫んだ当時の学生活動家世代の中には、現政権の改革姿勢に対する不満もくすぶる。
 ユドヨノ政権一期目(二〇〇四―〇九年)最大の成果とされるのが汚職撲滅への取り組みだったが、二期目発足後は自身の支持政党内での汚職事件が発覚するなど、改革に停滞感が漂っているのが現状だ。再選直後は九〇%を超えていた大統領支持率も、昨年五月には初めて五〇%台を割り込んだ。
 九八年の学生運動に携わった政治評論家のレイ・ランクティ氏はジャカルタポスト紙に対し、「現在までの間に、確かに制度は民主化されたが、中枢の政治家は自らの利益のために政治制度を不正に操作する傾向が見える」と指摘。「われわれが九八年以降、掲げ続けてきた理想を無視している」と非難した。
 スハルト政権下で行われた人権侵害の解決が不十分との指摘も根強い。元学生運動家で、人権団体「コントラス(行方不明者と暴力犠牲者のための委員会)」のハリス・アズハル氏は、スハルト政権による人権侵害の責任追及がされていないまま、現行法制度ができあがったことを問題視。「国内の人権問題解決の努力が欠如している。法制度の構築は国際社会に向けてのみの配慮だ」と断じ、過去の人権問題に対して弱腰なユドヨノ政権の姿勢を批判した。

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