医療廃棄物、川に流入 バンテン州 周辺住民に広がる不安
新型コロナウイルスの医療現場から排出された医療廃棄物が、人々の暮らしを脅かしている。バンテン州タンゲランを流れるチサダネ川にチプチャン最終処分場(南タンゲラン市)に捨てられた使用済みのマスクや注射器などが流れ込み、河川沿いの住民の間に感染の不安が広がっている。
チサダネ川の清掃活動などを行うNGO団体「バンクサスチ」のアデ代表によると、8月31日にチプチャン最終処分場のごみ山が崩れだし、大量のごみが河川に流入。処分場から約13キロ下流にある同団体の事務所付近の流域に同日夜、約1トンのごみが流れ着いた。
地元メディアによると、チプチャン最終処分場では5月22日、数日間続いた大雨の影響で、高さ16メートルにもなるごみの山が崩れ、最終処分場の防護壁が崩壊。しかし、壁の修繕工事は完了しておらず、河川へのごみ流出が懸念されていた。
ごみ流入から一夜明けた1日、同NGOメンバーのボランティアが地元警察や国軍とごみを回収。その中から使用済みのマスクや医療防護服(PPE)、注射器や薬品の容器といった医療廃棄物が約60個見つかった。流れ着いたごみのほとんどは同日中に回収されたものの、流出は現在も続いており、アデ代表によると、1日20個程度の医療廃棄物が見つかっているという。
医療廃棄物の流入を受けて、川沿いに点在するカンプン(集落)の多くが、川での水浴びや子どもの水遊びを禁止。住民の間には動揺が広がっている。パヌンガガン・バラット村の第1RW(町内会)会長のロジュディンさん(49)は、「村人はみなマスクを付けたり、真面目に感染対策をしているのに、よそから流れてきた医療廃棄物のせいで怖い思いをしている。子どもが誤って(医療廃棄物に)触れたりしなければいいのだが……」と不安を口にする。
一方、河原では魚釣りをしたり、魚を捕まえる網を仕掛ける住民の姿も。バンクサスチのスタッフは「多くの地域住民にとって、チサダネ川は生活と切り離せない存在。1日も早く、安心できる環境に戻ってほしい」と話した。
ロイター通信によると、インドネシアでは今年3~6月の間、新型コロナ問題の影響で1日あたり1480トンの医療廃棄物が排出された。一方、医療廃棄物の処理免許を持つ国内企業は10社のみで、専門家からは医療廃棄物を介した新型コロナの感染拡大を懸念する声が上がっている。(高地伸幸)