共感の素晴らしさ
「進路相談の必要があり、子どもに声がけすると「アー」と呟くだけ。子ども部屋のドアを閉められてしまいます」
本人も考えているのでしょうが自信もなく、真摯に向き合って話を聞いてもらえる安心感がないと、親に相談できないことはままあります。
子どもが相談をできない決定的要因は、親は話を聞いているつもりでも、上から目線で話し、「でもね、だからね、それだとね」と子どもを否定してしまうことです。
社会が大きく変わる中、大人でも先が見えない不安を抱え、どう暮らしていこうかと生き方をまさぐる時代です。こうすれば必ず幸せになれると子どもに言い切れますか? 従来型の親の価値観を子どもに押し付けるのは無理があります。
そこで今から、これまで以上に子どもの心に寄り添うよう心掛けてください。そのためには、話を「聞く」ではなく、「聴く」ことが肝心です。何を聴くかというと、気持ち、考えを聴きます。大切に思っていること、欲していること、嬉しかったことや、困っていることを聴いてみましょう。それができれば、安心して子どもの方から話してくれるようになります。子どもの考えを尊重しつつ、さり気ないサポートをして、選択の幅を広げてあげることもできます。
さらに、共感する聴き方ができれば、ポジティブな行動を生み出すことができます。
中三の受験生の孫がいるおばあちゃんの話は印象的でした。英語が得意なお孫さんは、海外の高校に通う夢を持っていましたが、新型コロナウイルスの影響で断念。成績が下がり始め、それを両親から厳しく叱られた時、下を向き一言も話せず泣いていたそうです。その後、おばあちゃんの部屋で必死に話を始めたので、目を見ながら真剣に「うんうん」と頷きながら聴き、最後に「悔しかったね」と言葉がけをしたそうです。
心から聴いていると、相手の感情に自分の感情がピタリと合わさることがあります。それを「共感」と言います。喜びは2倍になり、悲しみを半分に分かち合える、励まし勇気づける行為です。相手にしてみると、涙が出るほど嬉しく、力が湧く行為なのです。
「おばあちゃん、ありがとう。気持ちを切り替えて前に進みたい」という言葉をお孫さんが口にできた瞬間に、何かが変わり始めました。(コミュニケーション専門カウンセラー・家族関係心理士 高﨑美佳)
本稿へのご質問などは、カウンセリングルーム「ミカモーレ」(mikamour.fleur@gmail.com)まで。