UIバクティアル氏寄稿 経済悪化で審議に注目 雇用創出オムニバス法案

 インドネシアでは8月に入っても新型コロナウイルスの感染拡大が続き、経済も甚大な打撃を受けている。
 大方の予想では今年第2四半期(4~6月)の経済成長率はマイナス4~6%になると厳しい見通しだ。国家開発企画庁(バペナス)のスハルソ長官によると、「7月時点の失業者数は約1058万人。コロナ禍の影響で370万人増加した」という。
 こうした中、投資を阻害してきた煩雑な規制や重複する法令を一括して是正する雇用創出オムニバス法案審議の進捗状況が関心を集めている。
 この法案は今年2月、政府が国会に上程したが、盛り込まれた最低賃金の算出方法などについて労使双方から賛否両論が噴出。現行の規定では最低賃金は国内総生産(GDP)上昇率とインフレ率の和を掛けて算出するのに対し、この法案では各州の経済成長率をもとに決められ、毎年の上昇率もここ数年の8%台より下がる見通しだ。
 だが4月末、コロナ禍の中でこの法案の審議が一時的に延期され、6月中旬になってやっと再開された。これを受け、政府からは審議早期終了の見通しが相次いだ。
 ルフット海事・投資調整相は「オムニバス法は7~8月にも成立する」と語った。アイルランガ経済調整相も「雇用創出法案は早ければ8月末から9月に審議が終了する。現在、国会での審議は法案全体の半分まで進んだ」と述べた。
 しかし、政府の希望的観測と異なり、与野党の国会議員からは審議が難航する可能性が再三指摘された。
 国会の法律制定評議部の長を務めるスプラプトマン国会議員(グリンドラ党)は6月末、「国会は雇用創出法案を構成する複数のクラスターの審議を終えたが、(最低賃金の規定などを盛り込んだ)労働クラスターの内容についてはまだ妥協点が見出せず、ペンディング状態だ」と述べた。
 与党連合の中核をなす民族覚醒党のニハヤトゥル国会議員も7月中旬、「政府はこの法案の審議を8月までに終えると言っているが、各会派から提案された審議項目は千以上に及び、いかに1カ月で審議を終えるか途方にくれている」と指摘。
 同じく与党連合の一角をなすナスデム党のウィリー国会議員も7月半ば、法案に関する政労使の三者協議から複数の労組が離脱したことを受け、「雇用創出法案の労働クラスターについては労使の意見対立、こう着状態が続いている。妥協点が見出せない場合は、このクラスターを切り離し、労働法の改正案として個別に審議すべきだ」と語った。
 さらに、「最低賃金などの規定を切り離すことで、法案の趣旨を投資の促進と許認可取得の簡素化の二つに明確化できる」と提言した。
 これらの発言からは、政府と与野党の間で雇用創出法案の審議状況と今後の見通しについてかなりの温度差があること、さらに与党連合内部でも足並みの乱れがあることが露呈した。
 8月初旬まで労働団体などの抗議デモは続いており、世銀のような国際機関も時間をかけて慎重な審議をすることを勧告した。
 これからの経済復興での役割が期待されている雇用創出オムニバス法案の審議の先行きはまだ不透明だ。 (バクティアル・アラム・インドネシア大学=UI=人文学部上級講師、アジアコンサルト・アソシエーツ代表、原文日本語)

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