明日から犠牲祭 コロナ禍に見るイスラム教の助け合い

 新型コロナウイルスの感染が広がるなか、31日、イスラム教の犠牲祭(イドゥル・アドハ)を迎える。宗教省は感染防止のため、家畜のと殺や集団礼拝に身体的距離の確保などの条件を設定しており、例年のようなにぎわいは影を潜めそうだ。しかし、逆境の中だからこそ肩を寄せ合い、助けながら生きる、イスラム教徒の素顔が垣間見えるかもしれない。

 犠牲祭はヒジュラ暦の12月10日から4日間行われるイスラム教の行事。初日と最終日に集団礼拝が行われるほか、牛やヤギなどをいけにえに捧げ、その肉を町内会(RW)の住民や貧しい人に分配する。
 例年、犠牲祭では集団礼拝や家畜の解体のため、多くの人がモスクや解体会場に密集することになり、新型コロナの感染拡大が懸念されてきた。このため宗教省は、解体作業に同省職員による監督や身体的距離の確保を求めるガイドラインを設定。イスラム指導者評議会(MUI)も、合同礼拝の会場を風通しの良い開放された環境にすることを推奨したり、感染拡大地域では自宅礼拝とするよう呼びかけるファトワ(宗教見解)を発令している。
 また、コロナ禍の経済停滞も、犠牲祭に影響を及ぼしている。中央ジャカルタのマスマンシュール通りで毎年、東ジャワ州マランから運んだ牛を販売しているワリさんは、例年1週間で30頭は売りさばく牛が、「今年はまだ16頭しか売れない……」と肩を落とす。
 もっとも、イスラム教徒にとって犠牲祭は、レバラン(断食明けの大祭)に並ぶ大切な宗教行事であり続ける。中央ジャカルタ・タナアバン在住のデウィさん(48)は28日、町内会の住民から資金を集め、500万ルピアで羊を購入。「仕事を失った隣人もいるが、こういう時こそ、助け合わないと」と話している。
 またコロナ問題で急速に成長する電子商取引(EC)が、犠牲祭でも一役買っている。地元メディアによると、西ジャワ州ボゴール県の酪農家では、犠牲祭を前にECを通じた家畜の販売が昨年比で50%増加したという。
 最大手トコペディアなど複数のEC業者は、家畜の購入から解体、肉の分配までを代行するサービスを展開。サービスは数年前から存在していたが、今年はウイルス感染防止の視点から注目が集まっている。(久吉桂史、リリス・イラワティ、高地伸幸)

◇ 犠牲祭 レバランと並ぶイスラムの二大行事。預言者の一人イブラヒムが、息子をいけにえに捧げようとしてまで神の命令に従ったという聖典コーランの逸話にちなむ。逸話では、イブラヒムは「最愛の息子の命を犠牲にしても神に仕える」と語り、アッラーは実際にそうするように告げた。息子のイスマイルも「お前の父は本当にお前を殺すぞ」とささやく悪魔を退け、自ら父の前に体を横たえた。そしてイブラヒムが息子に短刀を振り下ろした瞬間、息子はヤギに変わっていたという。

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