「長時間労働、遺体を海洋遺棄」 外相、中国大使に抗議 中国漁船のイ人船員
サモア諸島沖で操業していた中国漁船に乗るインドネシア人船員18人が、劣悪な労働環境に加え不当な賃金で働かされていたことが分かった。船員のうち4人が病死し、そのうち船上で死亡した3人の遺体が、海に遺棄されたという。
ルトノ・マルスディ外相は7日、駐インドネシア中国大使を呼び、事実確認を要請している。
中国漁船が寄港した韓国の釜山で、インドネシア人船員が人権派弁護士などで構成される団体「APIL」に対して証言し、明らかになった。
APILと連携しているインドネシアの「DNT法律事務所」によると、インドネシア人船員を乗せた中国漁船3隻は、昨年2月15日からサモア諸島沖で操業を開始。漁船は違法なフカヒレ漁を行っていたとされる。
インドネシア人船員は漁船が操業していた昨年2月から今年4月までの約15カ月間、1日18時間の労働を強いられたうえ、賃金は約170万ルピアしか受け取っていなかった。また、インドネシア人船員は海水をろ過した粗悪な水と、傷んだ食品しか与えられず、病気がまん延した。
昨年10月ごろ、一部のインドネシア人船員が胸の痛みや呼吸困難を訴えた。インドネシア人船員は中国人船長に病院への搬送を求めたが、船長はこれを拒否。操業を続行した結果、3月30日までに3人が船上で死亡し、遺体はその日のうちに海に遺棄されたとしている。
さらに下船後に釜山市の病院に入院していたインドネシア人船員が4月27日、肺炎で死亡。インドネシア人船員の死者は4人となった。
韓国のテレビ局MBCは6日、インドネシア人船員の遺体を海に流す様子を撮影した映像を放映。その映像がユーチューブやインドネシアのテレビでも報じられた。
本来イスラム教では、遺体を死後24時間以内に土葬することが原則。遺体の運搬が困難な場合に水葬が認められることもあるが、脚に重りを付けて海底に沈むようにするなどの決まりがある。地元メディアによると、インドネシア人船員は、船上で死亡した場合、遺体をインドネシアに輸送すると説明を受けていたという。
こうした事態を受けて、インドネシアのルトノ・マルスディ外相は7日、駐インドネシア中国大使を呼び出し、中国政府に対して事実関係の解明を求めている。 (高地伸幸)