「事件繰り返すな」 マルシナさん殺害から19年 労働者団体が追悼集会

 スハルト独裁政権期の一九九三年、ストライキ参加後に虐殺された女性労働指導者マルシナさんの追悼集会が八日、中央ジャカルタ・メンテンにある人権団体「コントラス(行方不明者と暴力犠牲者のための委員会)」事務所であった。インドネシアの労働運動に国内外の注目が集まる中、会場には首都圏の労働者約百人が駆けつけ、マルシナ事件の教訓をかみしめた。
 「チック、タック」。午後七時、真っ暗な会場でスピーカーから時計の音が鳴り響いた。労働者をはじめ、人権団体のメンバーが手に持ったろうそくに火を灯す。
 「女の子らしく白い服を着て、チョコレートを食べたかった」。女性労働団体「プルンプアン・マハルディカ」のディアン・ノフィタさん(二四)が、同じ二十四歳で殺されたマルシナさんの心境を詩で読み上げる。
 「共産党(PKI)は帰れ」。労働運動に参加した時、共産主義者と指差された。「痛い、痛い」。殺され、森の中に捨てられた当時の様子を再現する。ろうそくの火だけが光る会場で、出席者は労働運動に散ったマルシナさんをしのんだ。
 集会では、各団体に所属する労働者が労働者の歌を熱唱。昨年まで衣服製造会社で勤務していたタリ・アディンダさん(三八)は女性労働者をテーマに作った「プルンプアン・タング(強い女性)」「マルシナ」を歌った。「マルシナのように闘った女性がいたから、女性の地位が改善された。これからも権利向上を訴えていきたい」と思いを込めた。

■当局者の脅迫続く
 追悼集会は、マルシナ事件を風化させず、現在の労使紛争に生かす教訓として語り継ぐべきだと訴えるために開催された。
 インドネシア労働者連合会議(KASBI)のニニン・エリトス代表(三九)によると、労働者団体の報告では、正社員昇格を求める労働者が監督官から「権利要求するなら辞めさせる」と拒絶されるケースが後を絶たない。また企業に雇われたとみられる国軍兵士や警察官が、賃上げデモを計画する労働者の自宅まで訪問し、デモの中止を促すことがあるという。
 追悼行事を毎年開催しているコントラスは、西ジャワ州ブカシ県で行われた最賃デモや燃料値上げデモを注視。プレマン(チンピラ)が労働者に暴力を振るうなどの事例を調査してきた。ジャカルタ支部のフィクタル・ダコスタ代表(三六)は「殺害こそないものの、脅迫など労働者への暴力は相次いでいる。マルシナ事件を繰り返してはいけない」と語った。

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