KPU委員汚職事件の波紋 UI上級講師バクティアル氏寄稿

 この国の民主主義に寄せる国民の期待を無残に裏切る事件がまた起きた。
 1月8日、総選挙委員会(KPU)のワフユ・スティアワン委員(46)が収賄容疑で、独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)に逮捕された。
 同委員にかけられた嫌疑は、昨年の国会議員選の南スマトラ1区での繰り上げ当選を巡って、闘争民主党(PDIP)ハルン・マシク候補(48)から賄賂を受け取ったこと。
 同候補は個人得票が下位だったが、投票日前に亡くなった他候補に代わって自らを繰上げ当選させるためにワフユ容疑者に約9億ルピアの贈賄を行ったという。ハルン容疑者も1月8日に逮捕されるはずだったが、行方をくらまし指名手配になっている。
 KPUは99年、スハルト政権崩壊直後に創設され、民主的な選挙の実施に大きく貢献した。初期の幹部は資材やサービスの調達をめぐる収賄容疑で摘発されたが、06年以来およそ10年以上にわたってKPU委員は汚職事件とは無縁だった。政党に擁立された候補者からの収賄で告発された委員も皆無だった。つまり、政党関係者とKPU委員の癒着が発覚したのは今回が初めてで、これが選挙実施機関としてのKPUの信用に影響を及ぼすことは必至だ。
 贈賄側の主犯格がいまだに逮捕されていないことも、波紋を呼んでいる。昨年発効した改正法がKPKの権限を大幅縮小したため、容疑者の逮捕に至っていないとの憶測が出ているからだ。
 汚職撲滅で目覚ましい成果を上げてきたKPKは、03年に活動を開始。昨年6月まで1064の汚職事件を手がけ、その中で国会・地方議会議員が関与した事件が目立って多かった。そのため、度々起きた法改正を通したKPK弱体化への動きも、汚職撲滅に逆らう動きとして批判されてきた。
 報道ではハルン容疑者がPDIP幹事長に近い人物と取りざたされ、今回の事件の背後に党幹部の関与があったのではないかとの疑惑も浮上した。いうまでもなく同党は現在、大統領与党で国会第1党であるため、政府と国会の両方で絶大な影響力を持っている。
 闘争民主党はこうした憶測に強く反発。弁護団を設置し、KPKの監督評議員などに陳情を行った。だがこうした動きは「政治的圧力とも誤解されかねない」と批判された。
 今回の事件後に起きたこれら一連の流れはこの国の民主主義の脆弱性を見せつけたが、民主化の成果を感じさせた点もあった。それは、報道の自由がまだ維持されているため、一般メディアが独自の調査で逃亡中の容疑者の足跡に関する政府発表の矛盾を指摘したことだ。
 発足から100日たった第2期ジョコウィ政権は、この事件にいかに対処していくのか。これが汚職撲滅に対する政府のコミットメントを見極める大事なポイントなることは間違いない。(バクティアル・アラム・インドネシア大学=UI=人文学部上級講師、アジアコンサルト・アソシエーツ代表、原文日本語)
 バクティアル氏 84年インドネシア大学文学部日本研究科卒。95年ハーバード大学大学院社会人類学科博士課程卒業、博士号取得。97年アジアコンサルト・アソシエーツ設立、同代表就任。04年東京大学大学院総合文化研究科客員教授。98~06年インドネシア大学日本研究センター所長。05~08年インドネシア日本研究学会(ASJIA)会長。08~14年インドネシア大学理事。16年インドネシアにおける日本研究の推進、日イ相互理解への貢献で旭日小綬章を受章。

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