攻撃続ける親IS勢力 首都テロ4年 支持者50万人弱か 治安専門家アデ氏に聞く (上)

 白昼、インドネシアの首都ジャカルタの中心部を恐怖に陥れたサリナデパート周辺でのテロ事件から1月で4年が経過した。事件は過激派組織「イスラミック・ステート(IS)」を支持する勢力が引き起こしたとされる。同勢力の事件後の動向、そして今後の出方は? 民間シンクタンク「急進主義・脱急進化研究センター」(PAKAR)のモハマド・アデ・バクティ所長(46)に聞いた。

 現場付近のタムリン通りは、事件などなかったかのようににぎやかだ。「被害に遭われた方々には言いにくいが、あのテロは、事件としては大きなものではなかったと考える」。近くのカフェに現れたアデ氏が切り出した。
 2016年1月14日に起きた事件では、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)などが入居していたスカイラインビルにあるカフェ「スターバックス」で男が自爆、サリナ前交差点の警官詰め所爆破や武装集団と治安部隊の銃撃戦なども起き、カナダ人らの民間人4人と実行犯4人が死亡、27人が重軽傷を負った。
 アデ氏は「ジャカルタでテロが起きたのは、09年(1月17日)に米国系高級ホテルのJWマリオットとリッツ・カールトンで強力な爆弾が爆発した事件以来だった。しかしサリナ周辺の事件は、フィリピン製の粗末な銃が用いられるなど、特に大規模な攻撃ではなかった」と振り返る。むしろ「事件は、親IS勢力によるインドネシアでの初めての本格攻撃だという点に特徴がある」と指摘する。
 サリナ周辺事件より前に起きた02年のバリ島爆弾テロなどの一連の事件は、東南アジアのイスラム過激派組織ジュマ・イスラミア(JI)が主導したとされる。「JIは当時、アルカイダの影響下にあった」
 その後、中東などでISが台頭。「ISのスポークスマンが14年末に世界のイスラム教徒に向け、イラク・シリアへ参集するよう呼び掛けるとともに、それを『暴君』が妨害するならば聖戦で突破せよ、と指示した」。こうした呼び掛けに、インドネシアの親IS勢力が応えたと推定する。
 「彼らは15年から活動を活発化、アホック(バスキ・チャハヤ・プルナマ)ジャカルタ特別州知事(当時)の暗殺など、同年末に一斉攻撃を準備していた。しかし、治安当局の警備強化によって封じ込められ、翌年1月になって矛先を変えてサリナ周辺での攻撃に打って出た、と考えられる」
 「以降の18年5月のスラバヤの教会での自爆テロや、19年10月のウィラント政治・法務・治安調整相(当時)暗殺未遂事件は、ISに忠誠を誓う勢力が引き起こした」
 「治安当局は、親JI勢力をジャマア・アンシャルット・ダウラ(JAD)と総称することが多いが、実際には主なものだけで、JAD以外に数組織ある。15年に16州で活動していたが、17年には24州、19年には国内ほぼ全域の31州に広がっている」
 その規模はどの程度か。
 アデ氏は「実際に暴力的活動に関与して拘束されたり、殺害されたりしている者は800人ほどだ」と語る。
 一方で「フェイスブックなどを通じて支持、共感している層もいる。確言できないが、50万人を上回ることはないと推定される。インドネシアのイスラム教徒人口の中で大きくはない数だが、少ないとも言えない」と注意を喚起した。(つづく)
(米元文秋)

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