【リトルインドネシアinアキバ】(1)実習生の駆け込み寺 3年越しの初対面に涙 土産店のアグスさん

 そこはまるでインドネシア人技能実習生の駆け込み寺だ。東京都千代田区神田須田町の日本土産店「JSSインターナショナル」。店主のアグス・スドラジャットさん(49)は、実習生の生活相談に乗るお兄さんのような存在。日本全国から実習生が訪れ、連休ともなると、インドネシア人で店内はごった返している。

 秋葉原駅から歩いて約3分、神田の下町の一角に、アグスさんの店はある。
 「アグスさんいますか」。先週の金曜夕、インドネシア人男性が観光客を連れて来店した。16年前に外国人技能実習生(当時研修生)として来日し、アグスさんとは古い仲だ。一緒に来た観光客は、Tシャツや和柄のかばんなど、お手ごろな価格の土産を紙袋いっぱいに購入していった。その後も、客が途絶えない。
 アグスさんは19年前、日本人妻との結婚を機に来日した。自宅の近くに実習の監理団体があり、実習生と縁ができた。当時、土日は自宅に実習生を招き、日本語の勉強会を開いた。実習生の先輩が後輩を紹介し、実習生の面倒を代々見るようになった。来日前からメッセージでやりとりし、生活の相談に乗る。
 実習生らから土産店を開いてほしいと言われ、7年前に同店をオープンさせた。価格は「ほかの店の半額くらい」。大量発注などを工夫し、価格を抑えた。インドネシアのメディアやユーチューバーに取り上げられ、インドネシア人旅行者の定番スポットになった。
 店内にはパイプ椅子や丸椅子が並ぶ。実習生ら来店者と話をするためだ。アグスさんは来店者に「買い物をしないでいいから、遊びに来て」と声を掛ける。金曜夜も、留学中のインドネシア人男性と記者が店の外で立ち話していると、「座ってきなよ」と招いてくれた。
 アグスさんは、帰国直前の合間に遠方から訪ねてきてくれた実習生のことを思い出す。約1年前、山形県での3年間の実習を終え、来店した。実習中には会うことができず、メッセージでやりとりだけしていた。
 実習生は羽田空港から帰国する際、「お兄さんがいるので会いたい」と付き添いの「先生」に申し出て、やっとアグスさんに会いに来ることができた。アグスさんと涙を流して抱擁。一緒に来た後輩らを「何かあったらよろしくお願いします」と紹介する「引き継ぎ」もしていった。
 一緒に来た付き添い人は、帰国時に多い失踪を警戒したためか、当初、面会を10分ほどしか許そうとしなかった。しかし、顔を合わせているうちにアグスさんを信用したようだった。「あとでまた迎えにくるから」と言い残し、実習生を預け、数時間席を外した。
 アグスさんは日ごろ、実習生から相談を受けると「失踪はしないように」と伝える。宿舎や実習の過酷な環境を吐露する実習生には「つらいのはわかる。(我慢して)インドネシアに帰ったら、いい人になれる」と励ましている。
   ×   ×
 JSSインターナショナルのある一角を、地元の人は「リトルインドネシア」と呼ぶ。オタク文化の秋葉原と神田の下町が入り交ざる〝異国〟。その姿を追った。(つづく)

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