発達障害、個性に合わせ学ぶ 自閉症センター「インドリヤ」ボゴール

 西ジャワ州ボゴール市に、発達障害やダウン症候群の子どもたちが通う学びやがある。幼少期に自閉症と診断された息子と向き合ってきた夫妻が、同じ悩みを持つ親子に療育法を役立てたいと17年前に開設。1歳から19歳までの70人が、一人一人の個性に合わせて学んでおり、職業訓練の導入にも乗り出している。

 光が差し込む明るい教室。セラピストのニラ・ソファさん(35)と向き合い、モセス君(10)がノートを開いた。「太陽は何番?」「4!」「何色でしょう?」「黄色!」。色鉛筆を選び、番号が振られた絵を塗っていく。
 ボゴール市にある、自閉症児らのためのセンター「インドリヤ」で行われている、マンツーマンのセラピーの一コマだ。
 ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されたモセス君は、約2年半前からセラピーに通う。半年かけて数字を3まで言えるようになり、12月までに「10まで数える」ことを目標にしている。「楽しい」を重視するセラピーでは、塗り絵も、色や数字を覚える教材の一つだ。
 母親のレトノ・クスティヤニさん(48)によると、モセス君は4歳まで言葉が話せなかった。「昔は(言葉を発さずに)指さしだったのが、文章が言えるようになってきた」。安心した様子で息子を見守った。

■職業訓練の導入へ
 夫婦でインドリヤを立ち上げた由美子サントソ衛藤さん(59)は、日系インドネシア人の夫との結婚を機に1987年に来イ。長男の幸司さん(25)は言葉の遅れなどが見られ、3歳半で自閉症と診断された。
 当時を「真っ暗なトンネルに放り込まれた感じ」と由美子さん。そこから日本やオーストラリアにも渡って療育方法を模索し、道が開けていった。視覚から学ぶのが得意な息子のために、果物や動物の写真を切り貼りしたフラッシュカードも自作。幸司さんは徐々に言葉を覚え、コミュニケーションが取れるようになったという。
 こうした経験を同じ境遇の親子に役立てたいと開いたインドリヤでは、「子どもが(普通)小学校に受け入れてもらえない」という保護者の悩みに応え、少人数制の学校教育も行ってきた。一クラス4~6人。算数や国語だけでなく、生活スキルを身に着けるため、炊事や掃除、洗濯の実践もあるのが特徴だ。
 怒りをコントロールするのが難しい子もおり、セラピスト歴13年のニラさんは「ブロックやスマホを投げつけられる」ことも。「そういう時は子どもを抱きしめるんです」とほほ笑んだ。「成長はゆっくりだけどその分、ひとつずつの喜びが大きい」と、保護者と二人三脚で子どもと向き合う。
 子どもたちの「自立」を目指すうえで新たな取り組みも。現在25歳になった幸司さんは、7月下旬にジャカルタにカフェを開店、バリスタとして店に立つまでになった。今後は幸司さんが教え役となり、子どもたちにも職業訓練を行っていこうと、準備を進めている。(木村綾、写真も)

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