【幻のコーヒー復活40年】(3)気候変動対策に取り組む 自前農園の強み発揮

 「私たちは気候変動へ対応するコーヒー生産技術を2030年までに現地トラジャに還元する」。ことし8月2日。キーコーヒーの副社長、川股一雄さんは、環境省が主体となって東京都内で開かれた産業界の温暖化の取り組みを発表するシンポジウムで宣言した。
 実は、いま世界のコーヒー業界で、深刻な事態が起きようとしている。コーヒー界の世界的な権威である米研究機関ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)の推定によると、世界のアラビカ種の栽培適地が2050年までに半減するという。理由は、気温の上昇や降雨量の減少でコーヒーチェリーの育成に必要な気象条件が変わるから。コーヒー需要は右肩上がりなのに、供給が難しくなるわけだ。
 直営パダマラン農園の農園長を任されて5年目のイサック・デンダンさん(51)は「乾期と雨期の境目がはっきりしなくなり、その影響で収量も落ちてきた」とやや顔を曇らせて説明してくれた。トラジャでも温暖化の影響が感じられ始めているのだ。3カ月間たっぷりの乾期がないと翌年の収量に影響するという。経営が軌道に乗ってきた同社のトラジャ事業も、「自然環境の変化」へ何らかの対策を講じる必要が出てきた。
 ここで自前のコーヒー農園を所有している新たな意味が浮上してきた。さまざまな実験やデータ収集を自らの手で行い、製品の品質向上に取り組めるからだ。同社は17年からWCRが主導し世界各国のコーヒー生産者が協力するプロジェクト「国際品種栽培試験」(IMLVT)に参加した。約40あるアラビカ種を世界各国の生産地で栽培し、各品種の栽培適地を明らかにしようとする試みである。
 パダマラン農園の敷地内2ヘクタールの研究農場に植えられた42品種のコーヒーの木々は3年を経過し、ことしようやく収穫の時期を迎えた。
 生産担当取締役の藤井宏和さんは「各品種の生育状況のばらつきが現れている。味にどのように影響しているか、今後WCRからのフィードバックを受けるのが楽しみ」と話す。気候変動対応への国際的な取り組みに協力できることはコーヒー専門会社として胸が張れるという。
 一方、キーコーヒー社独自で研究開発も行っている。収穫後にチェリーを脱肉工程前に氷温で熟成させる加工技術の開発に世界で初めて成功した。本社では「KEY—POS」と呼ぶ。生豆の香味成分である「ショ糖」「有機酸」「遊離アミノ酸」の量が約1割増加し、焙煎(ばいせん)後も豊かな香味と酸味が得られることが分かった。この設備を現地に持ち込み、昨年限定商品として販売した。
 コメなどの作物を氷温で熟成させてうまみを高めるという知見はすでにあったが、これをコーヒー豆にも応用した。結果として、気候変動などのコーヒー栽培環境の影響を受けることなく、加工によってコーヒーの品質を上げることができる展望も開けた、と言える。
 こうした将来を見据えた国際協力や技術開発はまだ始まったばかり。同社のトラジャプロジェクトは、コーヒー産業界の気候変動への対応策を現地に還元していく、という新たな挑戦に向かっている。(斉藤麻侑子、写真も、つづく)

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