工業団地で祭り開催 従業員ら家族で参加 若手元留学生のKAJI 交流の輪 拡大へ 「進出加速の今こそ」

 若手元日本留学生を中心に構成するインドネシア日本同好会(KAJI)は二十八、二十九の両日、西ジャワ州ブカシ県チカランのショッピングモール「シティーウォーク・リッポー・チカラン」で日本文化の紹介などを行う「桜祭り」を開催した。首都ジャカルタの中心部ではなく、日系企業が集積するジャカルタ東部の高速道沿いでも「祭り」を開催しようと企画された催しに、周辺の日系企業の従業員や在住の日本人らが家族連れで参加。好調な経済成長を背景に、日系企業の進出が加速する工業団地で草の根交流が図られた。

 桜祭りは今回が初めての開催。工業団地など地域開発を行う不動産開発大手「リッポー・チカラン」がKAJIに協力を依頼して実現した。在インドネシア日本大使館が後援したほか、周辺に工場を持つ日系企業を中心に多くの企業が協賛。チカラン在住日本人有志として、小林イツ代さん、奥信行さん、木暮七絵さん、佐々木哲也さんも企画段階から携わった。
 二十九日未明には、豪雨の影響で屋台などが設置されていたテントが崩壊するトラブルもあったが、二日間とも多くの訪問客が訪れ、にぎわいを見せた。発起から約二カ月と準備の時間が短い中、元留学生や日系企業従業員、在住邦人が力を合わせて祭り開催にこぎ着けた。
 会場にはたこ焼きやたい焼きなど日本食や日本の雑貨を販売するブースが並ぶ。モールの入り口前ホールに設置されたステージでは、周辺の学校に通う子どもたちが日本のダンスや歌を披露。二十八日にはアイドルグループJKT48がコンサートを行い、イベントを盛り上げたほか、ジャカルタ軽音部なども演奏を披露した。
 二十九日夕にはジャカルタ祭りの会が神輿(みこし)担ぎを行い、「ソイヤッ」と威勢の良いかけ声に人だかりができた。ミス・コンテスト「ミス桜」には、日系企業の従業員が参加。応援に駆け付けた同僚が「かわいい」と大声で声援を送った。
 けん玉など日本文化を紹介するスペースも設置。子どもたちが富士山を背景にした桜を描く教室教室に参加した娘の秋子ちゃん(四)とともに会場を訪れていた久富浩二さん(五九)はチカランのジャバベカ工業団地内の企業に勤務し、ブカシ県タンブンに住んでいる。久富さんは「周辺地域に家族で住んでいる人も多く、子どもも楽しめるプログラムが多くあっていい。子どもに知ってもらいたいと思って二日連続で来たが、子どもはすっかり夢中になっている」と語った。

■元留学生から広がる輪
 KAJIのフアド・カディル会長は以前、多くの日系企業が操業する工業団地が連なるチカンペック高速道沿いのホテルで働いていた際、日本で留学や研修をした従業員が隣り合う企業で働いているにもかかわらず、お互い顔も知らない現状を知り、「日本にかかわりのある人がネットワークを持てば、いろいろなことができるんじゃないか」と思い、KAJIの設立に動いた。
 フアド会長は「大きな工場では数千人が働いているが、日本文化に触れることはあまりない。周辺に住む従業員が参加できる工業団地での祭りは可能性がある」と述べ、日系企業の従業員の交流促進にも意欲を示した。
 二十九日に会場を訪れた中小企業(SMEJ)連合会の白石康信会長は「昨年ごろから日本からの投資がものすごく増えており、まさに今が交流を広げるべきタイミング。工業団地のある地域で祭りができて初めて、日イの友好の輪に広がりが出てくる」と述べ、来年以降、周辺のほかの工業団地とも協力して、祭りが拡大することに期待を示した。

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