【ロンボク島地震1年】 地震の教訓を子どもたちへ 備える文化、小学校から

 5日でマグニチュード(M)7・0の地震発生から1年を迎えるロンボク島。地震が起きるまで防災・減災の習慣がなく、大人も子どももパニックになった被災地の小学校では、避難訓練や防災計画づくりを通じ、災害に備える文化を育てようという試みが始まっている。

 2日、北ロンボク県のカヤンガン第1小学校で3回目となる避難訓練が行われた。地震を知らせるサイレンが鳴ると、4~6年生の35人は机の下へ。揺れが収まった合図で、リュックサックで頭をかばいながら、教室から校庭へと走って集合した。児童らは点呼に続いて、けが人役を応急処置。教職員が迎えに来た母親に児童を引き渡すまでの流れを確認した。
 北ロンボク県は地震で最も大きな被害を受けた地域。だが県教育・青年スポーツ局が管轄する公立小中学校193校のほとんどが、地震前まで一度も訓練を行ったことがなかった。 カヤンガン第1小も4月に避難訓練を始めたばかり。シティ・ハワ校長(54)は「長年大きな地震がなく、ロンボクとパル(中部スラウェシ)の震災を受けて初めて、防災に取り組む必要に迫られた」と話す。
 昨年7~8月の大地震はいずれも日曜日に発生し、児童や教職員の多くは自宅で被災した。9月には学校が再開されたが、余震が起きると子どもたちは散り散りになったり、泣き出したりしたという。教諭のユシタ・マヤンティさん(32)は「先生自身もパニックになり、子どもたちを置いて逃げてしまったことがあった」と振り返る。
 地震の教訓を生かそうと、県は3月ごろから、子ども支援のNGOセーブ・ザ・チルドレンと協力し、カヤンガン第1小を含む6校で避難訓練を含む防災教育の支援事業を始めた。6校は災害リスクの高さを基準に選定。カヤンガン第1小は海岸からわずか15メートルに位置し、津波にも備える必要がある。
 これまでに各校ごとに「災害前」「災害時」「災害後」の行動を定めた防災計画を策定。子どもたちや保護者も自ら避難経路図を作り、避難の手順を確認した。来月には近隣住民や救急隊員らも巻き込んだ合同訓練を初めて行う。県は同様の取り組みを、他校でも広げていきたいとしている。

■耐震性など課題も

 昨年の地震では、校舎の耐震性や避難経路の確保などの課題も浮かび上がった。
 甚大な被害を受けた同県タンジュンにあるソコン第8小学校では、仮設校舎で授業が行われる傍らで、損壊した校舎の改修が進む。「授業中だったら、犠牲が出たかもしれない」。2階建ての校舎の安全性を心配する保護者の声もあり、アドナン・ムクタマル校長(50)は「非常階段や避難用の滑り台を設置したい」と話した。
 同校では子どもたちのトラウマが解消されてきた一方で、今でも地震が起きると心配して学校から子どもを連れ帰る親もいるという。
 県教育・青年スポーツ局の担当者は「子どもたちが正しい防災知識を身に着け、親に伝えていってほしい。学校現場から、防災の文化を育てていきたい」と話している。(木村綾、写真も)

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