国会が恩赦支持 セクハラ被害者 「勇気持って発言を」
インドネシアでセクハラ被害者のバイク・ヌリル・マクヌン氏の有罪判決が確定した問題で、国会は25日、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領がヌリル氏に恩赦を与えることに賛成すると決めた。ヌリル氏は感謝を述べ、「勇気を持って発言を」とセクハラ被害者に訴えた。
国会第3委員会は、ジョコウィ大統領から恩赦を検討する書簡を受け、23日から審議を始めた。国会は25日、委員会からの報告を受け、恩赦を支持する決定をした。
採決の前、委員会のエルマ・スルヤノ・ラン氏は「ヌリル氏は、言葉による暴力の被害者。ヌリル氏の行動は、心理的暴力と性的暴力から身を守る、憲法で擁護される行為だった」と報告書を読み上げた。
ヌリル氏は「ありがとう、大統領、ありがとう、国会議員のみなさん」と声を震わせながら、弁護団などへの感謝を続けた。「この瞬間から、同じようなことが決して起きてはいけない」と何度も言葉をかみしめた。セクハラを繰り返さないために「勇気を持って発言しなければならい」と被害者に呼びかけた。
ヌリル氏の弁護士は、ジョコウィ大統領が早期に恩赦を発令することを期待している。
ヌリル被告は、2012年、ロンボク島マタラム市の勤務先の校長からひわいな電話を受け、セクハラを証明しようと、電話を録音、後に通話内容が拡散した。ヌリル被告は、拡散を否定したが、故意に拡散し、名誉を毀損したとして、情報電子商取引法(ITE法)違反に問われた。
最高裁判所は同法違反の罪で、禁錮6月、罰金5億ルピアの有罪判決を下した。ヌリル被告は再審請求したが、最高裁が5日に棄却した。
■ITE法の乱用を指摘
ヌリル氏の判決をめぐっては、人権団体やNGOが恩赦を訴えてきた。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル・インドネシア」は、ジョコウィ大統領や国会の決定に賛同。一方、ITE法の抜本的な修正を求めた。
同団体幹部のウスマン・ハミド氏は「ヌリル被告は、セクハラの被害者だけでなく、ITE法の犠牲者でもある。ヌリル氏の問題は、ITE法の弊害と矛盾を明らかにした」と指摘した。「ITE法は、批判を沈黙させることにたびたび使われてきた。名誉棄損と冒とくの項目をはじめ、抜本的にITE法を修正する時期に来ている」と訴えた。(木許はるみ)