実習生に架空の職歴 送り出し団体が追加か 関係者証言

 インドネシアの技能実習生の送り出し団体が、実習生の履歴書に架空の職歴を追加し、監理団体を通じ、外国人技能実習機構に提出している可能性があることが分かった。監理団体などの関係者によると、職歴の食い違いにより、一部の技能実習や就労のビザの申請が不許可となる影響も出ている。新たな在留資格「特定技能」のビザでも、同じ問題が生じる恐れがある。日本の出入国在留管理庁も「過去に入管に申請している経歴と食い違っていることがある」と問題を把握している。
 実習生は、日本の実習先と同職種の経歴(研修)を持っていることが受け入れの条件。技能実習機構は、履歴書などの書類をもとに、技能実習計画を認定、その後、出入国在留管理局が在留資格を審査する。
 監理団体関係者らによると、架空職歴は、この条件を満たすために、送り出し団体が追加しているとみられる。実習生本人、受け入れ機関は職歴の追加に気付かないことが多い。
 関東地方の監理団体の関係者の女性は、2016〜18年に実習生の職歴が変えられた履歴書を目にした。
 例えば、面接の時の履歴書では、ホテルに勤務し、経験職種は「清掃員」となっていた。一方、技能実習機構に提出する履歴書では、製造業者A社に勤務し、経験職種は「建築塗装」に変わっていた。同じ送り出し団体から、同時期に同じ実習先に送られた2人も、職歴がA社に変わっていた。別の送り出し団体の6人も、元の職歴にはない加工業B社が職歴に書かれていた。いずれの実習生も製造業者に送られた。
 女性は年間50件ほどのインドネシア人やフィリピン人の実習生の書類を取り扱い、「ほぼ100%の履歴書が面接のときと変わっていた」と話す。「一つの送り出し団体から10人の実習生が来るとき、ほぼ全員が同じ会社の職歴だった。その会社は従業員が20人くらいなので半数が実習生ということになる。機構も同じ会社名の履歴書がたくさん来るので、おかしいと思っているはず」と女性は話す。
 女性の監理団体では、年間1〜2件、入管から技能実習の在留資格の申請が不許可になることがあった。理由は履歴書の相違。「実習生が過去に別の送り出し団体から入管に履歴書を提出したことがあり、当時の履歴書と内容が違った」と女性は言う。
 
■ビザ不許可の原因に
 インドネシア人の元実習生の就労ビザ(エンジニアビザ)の申請を支援した東京都内の行政書士によると、本人が書いた履歴書を入管に提出すると、職歴のデータが違うことを理由に申請が不許可になった。
 行政書士はそれ以降、元実習生に対し、当時の送り出し機関で過去の履歴書を確認するように求めている。過去の履歴書のデータが分からないと、「申請をあきらめないといけないことがある」と話す。「実習生が履歴書にサインしていることもあり、過去の履歴書が誤っていて、就労ビザ申請で提出した履歴書の内容が真実であっても、申請内容に信憑性が認められないと入管に判断されてしまう」と指摘する。(木許はるみ、8面に関連)

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