業界で周知の事実 特定技能で問題化も 実習生に架空職歴追加
「言葉としては履歴書の偽造だが、制度上、要求されるから送り出し団体も書かざるを得ない事情がある。日本で働きたいというインドネシア人がいるのに、本人があずかり知らない部分を理由に不許可になるのは腑に落ちない」と話す。
行政書士は、就労ビザで申請が不許可になったように「(新たに施行された在留資格)特定技能でも同じ問題が起こり得る。入管には柔軟に対応してほしい」と指摘する。
監理団体の関係者の女性も「職歴の条件に合わせるために、わざわざうその書類を出さないといけない。ただ、技能実習制度がある限り、嘘をつくしかない」と改善を求める。
西ジャワ州の送り出し団体の幹部は、職歴が変わることは「よくある」と話す。理由は「それぞれの地域で仕事をしていても、職歴の証明をもらうのが難しい」という。地方の職場環境が整備されていない場所で、「証明書の発行は難しいため、証明を発行してくれる会社に頼ることになる」。
一方、幹部は未経験の職種を偽装したことはないと強調。職歴は、実際に経験した職種と同じ職種にしていると述べた。また実習生候補者が会社に勤めていたことがあっても、「(退職を快く思わない)会社が、証明を出してくれないこともある」とこぼした。
別の送り出し団体の幹部は、職歴の書き換えを否定したが、幹部自身が以前は、未経験の職種で技能実習を経験していたと明かす。
ある元実習生の男性は「インドネシアにない技術を学びに行くのに、職歴が必要なのはおかしい。しかも、インドネシアに帰っても、技術を生かせない職種もある」と話していた。
■入管「食い違いある」
日本の出入国在留管理庁は「技能実習生で来る人が、過去に入管に申請して経歴を出していることがあるが、そういう書類と食い違っていることがある」と認める。具体的な件数はまとめていないという。
虚偽の申請をもとに技能実習をした人が、特定技能を含め、別の在留資格の申請で問題になるかどうかは「個別の申請になるので、絶対に認められないということではない」と述べた。ただ、過去に履歴書を偽造していた場合、「一般的に虚偽の申請が認められるので、新しい申請が難しいことが想定される」と話す。
外国人技能実習機構は、虚偽の履歴書の提出があるかどうかについて、「個別の申請案件の内容になっているので答えを差し控えたい」と答えた。
職歴が書き換えられていたとみられる事例を証言した監理団体の関係者の女性は、書き換えについて機構に通報をしたというが、機構は「個別の通報内容は答えられない」としている。(木許はるみ、写真も)